鈍感な私は愛されヒロインです!?

 昼休みが近づいて、教室へ戻る途中。

「ひより」

「ん?」

「今日は一緒に食べる?」

「昨日も一緒だったじゃん」

「昨日は偶然一緒だったっていうか」

「理由になってないよ」

「まあいいじゃん」

 軽い調子なのに、なぜか断る気になれなかった。

 

 教室に戻ると、いつものように騒がしい昼休みが始まる。
 瀬名くんは当然のように、私の近くの席に座った。

「定位置になりつつあるね」

「気のせい」

「じゃあ明日も座る」

「勝手に決めないで」

「ひよりが嫌ならやめるけど」

 その言い方が、少しだけ真面目で。

「……嫌じゃないよ」

 そう答えると、瀬名くんは一瞬だけ目を見開いた。

「へぇ」

「なに」

「いや」

 すぐに、いつもの笑顔に戻る。

「じゃあ確定で」

「確定ってなに」

「昼休み席」

 意味わかんない。

 でも。

 お弁当を食べながら交わす他愛ない会話は、昨日より楽しい。

 放課後。

 教室を出るとき、瀬名くんがふと足を止める。

「なあ」

「なに?」

「ひよりさ」

 一瞬、言葉を探すように視線を泳がせてから。

「このクラス、来てよかったって思ってる?」

 不意を突かれて、少し考える。

「……うん」

 そう答えると、瀬名くんは小さく笑った。

「そっか」

 それ以上、何も言わなかった。

 でも、その横顔は、どこか安心したように見えた。