鈍感な私は愛されヒロインです!?

 休み時間。

 私は教室を出て、廊下の自販機へ向かう。
 あと少しで着く、というところで。

「ひより」

 後ろから声がした。

 振り返ると、瀬名くんが立っている。

「どうしたの?」

「一緒に買おうと思って」

「それだけ?」

「それだけ」

 並んで自販機の前に立つ。

「何飲む?」

「お茶かな」

「安定だね」

「瀬名くんは?」

「俺? 甘いやつ」

「意外」

「ひど」

 ボタンを押すと、缶が落ちる音が響く。

 瀬名くんは缶を取り出して、私に差し出した。

「はい」

「え?」

「間違えた。ひよりの押しちゃった」

「じゃあ交換しよう」

「いいよ、それ飲んで」

「え、でも」

 ちょっとしたことなのに、なぜか断りにくかった。

「……ありがとう」

「どういたしまして」

 廊下の窓から、校庭が見える。
 風に揺れる木の葉が、床に落ちていた。

「ひよりってさ」

 瀬名くんが壁にもたれながら言った。

「ほんと無自覚だよね」

「またそれ」

「いや、褒めてる」

「絶対褒めてないでしょ」

 瀬名くんは笑う。

 でも、その笑い方は、昨日より少しだけ柔らかかった。