鈍感な私は愛されヒロインです!?

 嫌じゃない、なんて思ったことに、自分で少し驚いた。

 駅へ向かう道を一人で歩きながら、さっきの会話を思い返す。
 瀬名くんは、相変わらず軽くて、冗談ばかりで、何を考えているのか分からない。

 なのに。

 最後の「楽しかった」という一言が、妙に耳に残っていた。

 ……ほんと、変な人。

 その日の夜は、いつもより少しだけ寝つきが悪かった。



 翌日。

 教室に入ると、すでに瀬名くんが席に座っていた。
 珍しく、机に突っ伏している。

「……おはよう」

 声をかけると、片目だけ開けてこちらを見る。

「おはよ。ひより」

「眠そうだね」

「昨日ちょっと夜更かし」

「ゲーム?」

「まあ、それもある」

 それも、ってなに。

 私が席に座ると、瀬名くんは顔を上げた。

「ねえ」

「なに?」

「昨日さ」

 一瞬、言葉を切る。

「……いや、なんでもない」

「なにそれ」

「気にしないで」

 そう言って笑うけど、どこか歯切れが悪い。

 チャイムが鳴って、会話はそこで途切れた。

 

 午前中の授業は、特に何事もなく進んだ。
 ただ、瀬名くんがいつもより静かだったのが、少しだけ気になった。