鈍感な私は愛されヒロインです!?

 午後の授業が終わると、教室は帰り支度の音で満ちる。

「ひより」

 瀬名くんが声をかけてきた。

「このあと、ちょっと残れる?」

「なにかあった?」

「委員会の手伝い。人数足りなくてさ」

「いいよ」

「即答だね」

「断る理由ないし」

 放課後の教室は、昼間より少し静かだった。

 二人でプリントをまとめながら、瀬名くんがぽつりと言う。

「この間さ」

「うん?」

「体育の授業の時、月城といい感じだったよね」

 一瞬、手が止まる。

「そうかな?」

「……まあ、いいけど」

 少しだけ、間があった。

 でも、すぐにいつもの笑い方に戻る。

「ひより、帰り方向どっち?」

「駅の方」

「一緒じゃん」

 並んで歩き出す。

 夕方の風が少し冷たくて、歩く速度が自然と揃った。

「今日さ」

 瀬名くんが前を見たまま言う。

「なんか楽しかった」

「……急にどうしたの」

「いや、言いたくなっただけ」

 それ以上、何も言わない。

 駅が見えてきて、瀬名くんは手を振る。

「じゃ、また明日。新入り」

「だから違うってば」

 そう返すと、瀬名くんは笑った。

 その背中を見送りながら、私は首をかしげる。

 変な人。

 でも――
 嫌じゃない。