鈍感な私は愛されヒロインです!?

 家に着いて、靴を脱いだ瞬間、ようやく息を吐いた。
 誰もいない玄関が、少しだけ広く感じる。

 制服のまま部屋に入って、鞄を床に置く。
 ベッドに腰を下ろした途端、さっきまでの光景が、勝手に頭に浮かんだ。

 放課後の教室。
 月城くんの、近すぎる距離。

「……違うよね」

 思わず、声に出してしまう。
 誰に言うでもなく、ただ自分に向かって。

 今までだって、男子と話すことはあった。
 距離が近いことだって、なかったわけじゃない。
 それなのに――。

 ベッドに倒れ込んで、天井を見上げる。
 胸の奥が、落ち着かない。

 人との距離。
 いい意味で、変わらない。

 月城くんの言葉が、頭の中で何度も繰り返される。
 意味なんて、考えなくていいはずなのに。

「……考えすぎ」

 小さくつぶやいて、目を閉じた。

 これはきっと、気のせいだ。
 そうじゃないと困る。

 だって、もし――
 もしこれが、ただの“気のせい”じゃなかったら。

 そこまで考えて、私は慌てて首を振った。

 違う。
 そういうのじゃない。

 そう思いたかった。
 強く、思いたかった。

 なのに、
胸の奥に残った小さな熱だけは、どうしても消えてくれなかった。