鈍感な私は愛されヒロインです!?

「疲れてる?」

 不意に聞かれて、驚いた。

「え? どうして?」

「今日は、あんまり前見てなかったから」

 そんなこと、自分でも気づいてなかった。

「……大丈夫」

 そう答えると、月城くんは「そっか」とだけ言った。

 それ以上、何も聞いてこない。
 それが、なぜか少しだけ安心する。

 下駄箱に着いて、靴を履き替える。
 外はもう、夕焼けに染まり始めていた。

「じゃあ」

 月城くんが言う。

「うん。じゃあ、また」

 それだけで終わるはずだった。

 なのに、月城くんは一瞬だけ迷ったみたいに視線を落としてから、言った。

「……無理、しなくていいから」

 何を、とは言わなかった。
 でも、その一言が、胸の奥に静かに落ちる。

「うん」

 理由も分からないまま、私は頷いた。

 校門の外で別れて、少し歩いてから、立ち止まる。
 振り返っても、もう月城くんはいない。

 なのに。

 胸の奥が、さっきよりも落ち着かない。

 考えないようにしてるのに。
 どうしても、あの声と、さっきの空気が、頭から離れなかった。