鈍感な私は愛されヒロインです!?

 放課後のチャイムが鳴ると、教室の空気が一気に緩んだ。
 椅子を引く音と、笑い声と、部活に急ぐ足音が重なって、少しだけ騒がしくなる。

 私は鞄にノートをしまいながら、早く帰ろうと思っていた。
 今日は、余計なことを考えないって決めたから。

「桜庭」

 呼ばれて顔を上げると、月城くんが立っていた。

「これ、提出明日だから」

 差し出されたのは、プリント一枚。
 ただそれだけなのに、心臓が一拍遅れる。

「あ、ありがとう」

 受け取る指先が、ほんの少しだけ触れた気がした。
 気のせいだと思いたくて、私はすぐに手を引っ込める。

 月城くんは何も言わずに、軽く頷いただけだった。

 教室を出ると、廊下はもう静かだった。

 気づけば、月城くんと並んで歩いていた。

 話すことは特にない。
 でも、歩く速度が自然と合っている。

 私が少し遅れると、月城くんも同じだけ遅れる。
 早めると、同じように前に出る。

 ……合わせてる?

 そう思った瞬間、私は首を振った。

 違う。
 偶然だ。