鈍感な私は愛されヒロインです!?

 席に向かう途中、自然と前を見る。
 月城くんはもう座っていて、ノートを開いていた。

 ただそれだけなのに、視線を逸らすタイミングを失う。

 ……見てたわけじゃない。
 たまたま、目に入っただけ。

 私は自分の席に座って、鞄を足元に置いた。

 授業が始まっても、集中しきれない。
 黒板の文字を書き写しながら、ふとした拍子に、前の席の背中が視界に入る。

 月城くん。

 名前を心の中で呼んだだけで、少しだけ呼吸が浅くなる。


 休み時間、黒崎くんが椅子を引いて近づいてきた。

「桜庭」

「なに?」

「今日、昼どうすんだ」

「いつも通りだけど」

「そ」

 それだけ言って戻っていく。
 短いやり取りなのに、なぜか月城くんの方を一瞬だけ気にしてしまった。

 ――今の、見られてたかな。

 そう思った時点で、私は小さく首を振った。

 違う。
 考えない。

 昼休みも、放課後も、昨日と同じ。
 そうやって過ごせば、きっとこの違和感は消える。

 ……はず、なのに。

 ノートの余白に落ちた影を見つめながら、私は気づかないふりを続ける。

 考えないようにしてるのに。
 どうしても、頭の片隅から離れない。