鈍感な私は愛されヒロインです!?

 朝、目が覚めた瞬間に思った。

 ――今日は、ちゃんと普通に過ごそう。

 昨日のことは、考えない。
 放課後の空気とか、視線とか、意味の分からない間とか。全部、気のせいだったってことで。

 そう決めて、ベッドから起き上がる。

 顔を洗って、制服に袖を通して、鏡の前で髪を整える。
 いつもと同じ。何も変わってない。

「……よし」

 小さく言って、家を出た。

 通学路は、いつも通りだった。
 同じ電柱、同じ曲がり角、同じ時間帯の人の流れ。

 なのに、学校が近づくにつれて、胸の奥が少しだけ落ち着かなくなる。

 ……なんで?

 理由を考えそうになって、私はすぐにやめた。
 考えないって決めたんだから。

「おはよ」

 瀬名くんが気づいて、軽く手を上げた。

「おはよう」

 普通に返した、はずなのに。

「……昨日、なんかあった?」

「え?」

 いきなりで、声が裏返った。

「いや、別にー。顔がちょっと違う気がしただけ」

「気のせいだよ」

 即答すると、瀬名くんは意味ありげに笑った。

「はいはい」

 納得してない顔。
 でも、それ以上は何も言ってこなかった。