鈍感な私は愛されヒロインです!?

 会話は続かない。
 でも、気まずくもない。

 下駄箱に着くころ、夕焼けが校舎の影を長く伸ばしていた。
 靴を履き替えながら、私はなぜか昼のことを思い出す。 理科室で、月城くんが来た瞬間の、あの安心した感じ。

 ……なんで今、そんなこと考えてるんだろ。

 靴箱を閉める音が、やけに大きく響いた。


「じゃあ」

 月城くんが言う。

「うん。じゃあ、また明日」

 それだけで、十分だったはずなのに。
 月城くんは一瞬、何か言いかけたみたいに口を開いて、結局、何も言わずに笑った。

 その笑顔が、夕方の光に溶ける。

 校門の外で別れて、私は一人で歩き出す。
 数歩進んでから、なぜか後ろを振り返ってしまった。
 もう、そこには誰もいないのに。


 ただの放課後。ただの帰り道。

 なのに、胸の奥に、名前のつかない何かが残ったままだった。