鈍感な私は愛されヒロインです!?

「桜庭、食べないの?」

「え? あ、食べる」

 箸を持って、一口。
 味はちゃんとするのに、なんだか落ち着かない。

「今日さ、月城どしたんだろ」

 前の席から聞こえた声に、思わず顔を上げる。

「さあ? 体調悪いんじゃね?」

「珍しいよな」

 そんな会話が、耳に入ってくる。

 ……やっぱり、みんなも思ってるんだ。

 そう思ったら、少しだけ安心して、
 でも同時に、胸の奥がむずっとした。

「ひより」

 名前を呼ばれて振り向くと、瀬名くんが立っていた。

「一緒に食べよ」

「うん」

 向かいに座られて、お弁当を広げる。
 瀬名くんはいつも通り、軽い調子だ。

「今日は静かだな、あの辺」

 そう言って、顎で月城くんの席を示す。

「……そうだね」

 返事をしながら、
自分の声が少しだけ小さくなったのが分かった。

「ひより、気にしてる?」

「え?」

「月城」

 ドキッとする。

「別に……」

 そう答えたはずなのに、
なぜか言い切れなかった。

 瀬名くんは、ふっと笑った。

「まあ、あいついないと変な感じするよな」

「……うん」

 その言葉に、少しだけ救われた気がした。

 私だけじゃない。
 そういう意味で。