鈍感な私は愛されヒロインです!?

 授業が始まっても、月城くんは来なかった。

 黒板に向きながら、ノートを取る。
 でも、視界の端にある空席が、やけに目に入る。

「……休み?」

 理由を考えてみるけど、答えは出ない。

 ただ、いつもそこにあるものがないだけ。
 それだけなのに。

 チャイムが鳴って、休み時間になる。

「桜庭、ちょっといい?」

 声をかけてきたのは、瀬名くんだった。

「なに?」

「今日さ、月城見てない?」

「え?」

 思わず聞き返す。

「いや、まだ見てないから」

「……私も、まだ」

 そう答えた瞬間、
胸の奥が、少しだけざわっとした。

 瀬名くんは気にした様子もなく、軽く肩をすくめる。

「ま、そのうち来るでしょ」

「……うん」

 そうだよね。
 そのうち来る。

 分かってるのに。

 私はもう一度、空いている席を見た。

 当たり前みたいに、そこにいると思っていた人。
 いないだけで、こんなに意識してしまうなんて。

「……変なの」

 自分にそう言い聞かせて、
 私はノートに視線を戻した。

 理由は、まだ分からないまま。