鈍感な私は愛されヒロインです!?

 教室のドアを開けると、いつものざわざわした空気が広がっていた。

「おはよー」

 何人かに挨拶を返しながら、自分の席に向かう。
 鞄を置いて、椅子に座って――

 そのとき、自然と視線が横に流れた。

 ……空いてる。

「……」

 月城くんの席。

 まだ来てないだけ。
 遅刻でも珍しくないし。

 そう思ったのに、もう一度、ちらっと見てしまう。

「桜庭ー、今日の小テストやばくない?」

 声をかけられて、はっと我に返る。

「え? あ、うん。やばいかも」

 返事をしながら、ノートを開く。
 でも、文字が頭に入ってこない。

 ……なんで。

 今までだって、月城くんが先に来てない日なんてあった。
 それなのに今日は、席が空いてるだけで、少し落ち着かない。

「気のせい、気のせい」

 小さく呟いて、深呼吸する。

 しばらくして、チャイムが鳴る直前。
 教室のドアが開いた。

 反射的に顔を上げる。

 ……違った。

 別のクラスの生徒が、先生を呼びに来ただけだった。

「……」

 自分でも分かるくらい、肩の力が抜ける。

「桜庭、どうした?」

「え? な、なんでもないよ」

 聞かれて、慌てて首を振る。

 なんでもない。
 本当に、なんでもない。