鈍感な私は愛されヒロインです!?

 生徒会室を出て、廊下を歩き出す。
 夕方の校舎は、人が少なくてやけに音が響いた。

 月城くんは、私の少し前を歩いている。
 いつもなら、横に並ぶか、後ろから声をかけてくるのに。

「……月城くん」

 呼ぶと、足が止まった。

「なに?」

 振り返った顔は、いつもと同じ。
 ……のはずなのに、どこか硬い。

「さっきの、なんだったの?」

 正直な疑問だった。
 生徒会室の空気が変わった理由も、二人の会話の意味も、分からない。

 月城くんは一瞬だけ言葉に詰まったように視線を逸らす。

「……別に」

「別に、って顔じゃなかったけど」

 そう言うと、少しだけ困ったように眉を寄せた。

「桜庭は、気にしなくていい」

「え?」

「会長の言ったことも、俺の言ったことも」

 ……余計に気になる。

「でも、なんか怒ってたでしょ?」

 私がそう言うと、月城くんは小さく息を吐いた。

「怒ってたっていうか」

 言いかけて、止まる。

 それから、私を見る。

「……ちょっと、焦っただけ」

 焦った?

「何に?」

 問い返すと、月城くんは少しだけ目を見開いて、それから苦笑した。

「ほら、こういうところ」

「?」

「無自覚」

 さっき会長が言っていた言葉と、重なる。

「桜庭はさ」

 歩き出しながら、月城くんはぽつりと言った。

「誰にどう見られてるか、ほんと分かってない」

「そんなことないと思うけど……」

「ある」

 即答だった。

 校舎を出ると、夕焼けが目に入る。
 オレンジ色の空の下で、月城くんは足を止めた。