鈍感な私は愛されヒロインです!?

「選ばれる側だと思っている人間ほど、残酷だよ」

「……えっと、それは……」

 何の話をしているのか、分からない。
 私は困って言葉を探すけど、会長はそれを待たない。

「君がどう思っているかは、今は聞かない」

 一歩、距離が詰まる。

「でも、俺は――」

 そのとき。

「……会長」

 低い声が、生徒会室の入口から聞こえた。

 振り向くと、そこに立っていたのは月城くんだった。

「桜庭、探してました」

 いつもより表情が硬い。
 視線は、私じゃなく会長を見ている。

「月城か」

 会長は一瞬だけ視線を向けて、それから私に戻した。

「いいところに来たね」

「……そうですか」

 月城くんの声が、少しだけ低くなる。

「桜庭が、そういう話、困るって分かってて言ってますよね」

 空気が、変わった。

 さっきまで静かだった生徒会室が見えない糸で張りつめたみたいに感じる。

「月城」

 会長は穏やかなまま、でも一歩も引かない。

「俺は、彼女に選択肢を与えているだけだ」

「それを“余裕”って言うなら」

 月城くんは、短く息を吐いた。

「俺は、余裕ないんで」

 ……え?

 思わず二人を見比べる。

「会長、それ以上は」

 月城くんの声は荒げていない。
 でも、はっきりとした拒絶だった。