鈍感な私は愛されヒロインです!?

 次の日の放課後。

 私は生徒会室の前で、少しだけ立ち止まっていた。

 学園祭の後片付けで、会長に呼ばれたのは今日が初めてじゃない。
 なのに、なぜかノックする手が一瞬止まった。

 ……別に、変な理由はない。
 ただ、最近この人と話すと妙に空気が落ち着きすぎていて、それが少しだけ、やりづらいだけ。

 意を決してノックすると、すぐに声が返ってきた。

「どうぞ」

 中に入ると、神楽坂会長は書類から顔を上げて、私を見た。

「来てくれてありがとう。少しだけ話したくてね」

「いえ、大丈夫です」

 そう答えながら、私は机の前に立つ。
 会長は椅子から立ち上がり、私と向き合った。

 距離は、近いけど近すぎない。
 でも、逃げ場がない距離。

「学園祭、疲れただろう」

「はい。でも楽しかったです」

「そう」

 それだけ言って、会長は一瞬だけ目を細めた。

 ……沈黙。

 嫌な沈黙じゃない。
 ただ、何かを待たれているような、そんな感じ。

「桜庭」

 名前を呼ばれて、思わず背筋が伸びる。

「君は、自分がどれだけ周りに影響を与えているか、分かっていない」

「……え?」

「無自覚なのが、君の一番厄介なところだ」

 責める口調じゃない。
 むしろ穏やかなのに、言葉だけがやけに重い。