鈍感な私は愛されヒロインです!?

 私は卵焼きを口に運びながら、ふと視線を感じて顔を上げた。

「なあ新入り」

 やっぱり、って思った。
 瀬名くんが、にやっとした顔でこっちを見ている。

「……まだ言う?」

「言う言う。だって新入りだし」

「もう転校してきて結構経つんだけど」

 そう返すと、瀬名くんは少し考える素振りをしてから、あっさり言った。

「じゃあ、元新入り?」

「それ意味ある?」

 思わず突っ込むと、近くにいた何人かが小さく笑った。
 瀬名くんは満足そうに肩をすくめる。

「まあまあ。昼休みくらい、ゆるくいこうぜ」

「いつもゆるすぎでしょ」

 そう言いながらも、私も少しだけ笑ってしまう。

 昼休みの終わりを知らせる予鈴が鳴ると、教室の空気が少しだけ切り替わった。
 さっきまでのざわざわが、慌ただしい動きに変わる。

 私はお弁当箱を閉じて、鞄にしまった。
 机の上を軽く拭いて、椅子を戻す。

「もう終わりかー」

 瀬名くんが伸びをしながら言う。
 さっきまでの軽いノリはそのままで、でもどこか名残惜しそうだった。

「昼休み短すぎ」

「それは毎日言ってるよね」

「毎日短いからな」

 そう言って笑うと、瀬名くんは自分の席に戻っていった。

 予鈴がもう一度鳴る。

 私は背筋を伸ばして、前を向いた。
 午後の授業が始まるだけ。特別なことは何もない。

 さっきまで少し騒がしかった教室も、いつもの落ち着かない静けさに戻っていく。
 私は教科書を開いて、次のページに指を置いた。


 昼休みが終わった。それだけだ。