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・【14 キクイモを料理する】
・
まずはブラシでちょっと強めにキクイモの泥を洗ってから薄くスライスして、酢漬けにしてみた。
まあ味が染みたほうがそりゃ美味しいだろうからそれはこれとして、琢磨が、
「圧力鍋で肉じゃがでも作ってみる? ジャガイモの代替みたいな感じで」
「いいかも。じゃあキクイモは軽くカットして使ってみようか」
キクイモは元々一口サイズという感じだけども、それを半分に切って、火の通りを良くすることにした。
豚肉は冷蔵庫にあったので、少し使わせてもらって、ショウガを軽くすりおろして、タマネギをカットして、簡易的ながら肉じゃがの形にはなった。
琢磨が何だか嬉しそうに、
「パリパリのキクイモ肉じゃがなんていいかもな。じゃがじゃないけども」
「そうだね、試したことないから楽しみだね」
すると琢磨が格言を言うように、
「じゃがナシ、オミソナシ」
「いや! 私はありだわ! 煮ても崩れなさそうとか私の案だわ!」
「オミソ、手柄ナシ」
「何で手柄ナシになるんだよ! キクイモ上手くいったら履歴書にも書いてやるからな!」
「オミソ、犯罪歴ちょっとだけアリ」
「無いよ! 全く無いから! おまんじゅう泥棒とかしたことないから!」
「オミソ、犯罪歴ちょっとだけナシ」
「どういう日本語だよ! 本気でナシだわ!」
琢磨はヘラヘラ笑っていて腹が立つ。
今、琢磨のこと殴って犯罪歴作ってやろうか、作らないけどね!
そんなこんなで、カフェにノーマルお客さんもやって来て、その接客などをしていたら、あっという間に圧力鍋肉じゃがの完成の時間になり、琢磨はちょうど接客中だったので、先に私だけチェックすると、目を丸くしてしまった。
あー、こりゃ履歴書に書けないわー。
キクイモを箸で持とうとすると、皮がしゅぷっと潰れて、中身がとろとろと溶けだしていくのだ。
全然パリパリ感って持続しないんだ、むしろジャガイモよりもとろとろというか。
軽く味見をしてみると、優しい甘みが口いっぱいに広がり、喉越しがめっちゃ良い。パリパリの真逆だ……いやいや、むしろ良いんじゃないか?
なんというか歯茎だけでも噛めるような柔らかさで、キクイモだけでとろみバッチリだから、介護食とかにも良さそう。
接客を終えた琢磨が戻ってきたので、現状を報告すると、琢磨は、
「めっちゃ良いじゃん! じゃあもう一回キクイモをカットしないで作ってみるか!」
二人で改めて、キクイモをカットせず、肉じゃがを作り、完成したところで食べてみると、琢磨はサムアップしながら、
「うん! 皮に包まれていてもちゃんと中はとろとろになっている! これは何かちゃんとした料理になるな!」
私も同意しながら、
「アレルギー的にはゴボウとか春菊と同じ部類で、ゴボウ系なんだけども、味はなんというか里芋みたいというかそれ以上の甘さがあるね!」
琢磨はノリノリで、
「もっといろんな料理考えてみようぜ!」
私もうんと強く頷いてから、
「ふかすとどうなるかな? 蒸すというか」
琢磨が嬉しそうに、
「いっぱい味見しよう!」
と言ったので、そこは、
「イヌリンという食物繊維の成分がお腹を緩くすることもあるからほどほどにね」
と言ってあげると、琢磨は目を輝かせながら、
「アレルギーもそうだし、めっちゃ調べていて、本当にオミソは真面目だな!」
真面目って……何か、ガリ勉みたいで少し嫌かも……こういう遠回しの悪口が本当に得意だなぁ、琢磨って。
琢磨はまだ喋っていて、
「尊敬するよ! そういうとこ!」
と念を押してきて、裏のある言いっぷりばかりしてきて、ちょっとは真正面から褒めてもいいのにと思ってしまった。
まあそんなこと期待しても無駄な人間か。仕方なし。
蒸しも完成し、私の独断で軽く塩を振って食べてみると、琢磨は「おー!」と言ってから、
「めっちゃ美味しい! キクイモ自体に旨味があるから軽く塩だけで全然美味しい! ジャガイモとかよりも好きかも!」
私も食べてみて、ちゃんと美味しくなっていて、まさかこんな活用法がキクイモにあったなんてと驚く。
次の日、イノッシくんが来たところで、昨日作ったようなキクイモ三昧のメニューを出すと、イノッシくんは嬉しそうに、
「これすごい! こんなとろとろになるなんて思わなかった! で! どうっ?」
何だか得意げにそう言ったイノッシくん。
確かにカフェのメニューとして考えても良さそうだけども、
「これなら、料理の仕方を言ったうえで、料亭とかにプレゼンしてもいいかもね」
と私が言うと、イノッシくんは嬉しそうに、
「かも! そうだ! そうだ! これも! これも!」
と言ってイノッシくんは持ってきていたリュックから、何かビニール袋を取り出した。
そこには白い粉が入っていて、何だろうと思っていると、イノッシくんが、
「親戚に言ったら、これもどうにかしてほしいと言われて!」
「「これも……?」」
と私と琢磨の声がユニゾンした。
イノッシくんは続ける。
「これキクイモの粉だよ! どう!」
”どう”って……さすがにキクイモの粉末は、本当にどうすれば……と思っていると、琢磨が、
「まあちょっと考えてみますかっ」
と私のほうを見ながら言ってきて、正直イケるかなぁ、と不安になっていると琢磨が、
「オミソと俺なら絶対何か浮かぶって!」
と言ってきて、その根拠無い自信につい吹き出してしまうと、琢磨が満面の笑みで、
「やってみよう!」
まあそこまで言われたらと思って、今度はキクイモの粉末に取り掛かることにした。
イノッシくんも帰っていき、まずはちょっと味見してみることにした。
琢磨がうんうん頷きながら、
「ほんのり甘いな」
私はふと、
「普通にほんのり甘い粉、なんというか砂糖の代替みたいな売り文句を付ければいいんじゃないの?」
「アリだな、オミソ商才アリ、だな」
「昨日のノリ復活? というか褒めるパターンあるんだ」
「俺は結構オミソのこと褒めてるつもりだけども」
「全然。需要と供給が一致していません」
「どんだけ需要あるんだよ」
と琢磨が笑ったところでハッとした。
何か琢磨からめっちゃ褒められたいみたいじゃん。
全然そんなことないのに。
「ゴメン、需要ゼロでした。琢磨の褒めは何か気持ち悪いのでいりません」
と言うと、琢磨は急に申し訳無さそうに、
「そっか、ゴメン……」
と肩を落としたので、さすがに気持ち悪いは言い過ぎだったかもと軽く反省して、
「気持ち悪いはまあ言い過ぎだけども、ちゃんと真っ直ぐ褒めるなら褒めていいよ。でも遠回しの嫌味とかは本当に良くない!」
と昨日のことを思い出しながら言うと、琢磨はパァッと明るい顔をして、
「そっか! まあ嫌味とかそんな言ってるつもりもないけど、そう感じさせないように頑張るわ!」
全く、琢磨少年は少年なので、はっきり言ってあげないとね。オトナの私は本当に気を遣う中間管理職ですわっ。
私は、あとって感じで、
「妻籠宿は五平餅が人気だからさ、クルミの素朴さをメインでやっているところなら砂糖の代わりにキクイモの粉末とか本当に良いかも。糖の上昇を緩やかにするなら甘いものに使うのがいいかも」
琢磨は目を丸くして、
「本当オミソはアイデア豊富ですごいよなぁ」
と感嘆の息を漏らしたようだったけども、そもそもオミソと言われた時点で半ディスりのような気もする。
真っ直ぐ美園と言えばいいんだけどなぁ。だからって別に琢磨から名前で呼ばれたいわけじゃないけども。どうでもいいヤツだから。
そんな感じで、砂糖の代替として甘いタレや生地に混ぜるという案をたくさん考えて、この日は終わった。
また次の日にイノッシくんに伝えると、イノッシくんは上機嫌に帰っていった。
結局キクイモをカフェにおろすみたいな話にはならなかったけども、イノッシくんからは親族共々商売が上手くいっているという報告をもらい、良かったんだとホッとした。
・【14 キクイモを料理する】
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まずはブラシでちょっと強めにキクイモの泥を洗ってから薄くスライスして、酢漬けにしてみた。
まあ味が染みたほうがそりゃ美味しいだろうからそれはこれとして、琢磨が、
「圧力鍋で肉じゃがでも作ってみる? ジャガイモの代替みたいな感じで」
「いいかも。じゃあキクイモは軽くカットして使ってみようか」
キクイモは元々一口サイズという感じだけども、それを半分に切って、火の通りを良くすることにした。
豚肉は冷蔵庫にあったので、少し使わせてもらって、ショウガを軽くすりおろして、タマネギをカットして、簡易的ながら肉じゃがの形にはなった。
琢磨が何だか嬉しそうに、
「パリパリのキクイモ肉じゃがなんていいかもな。じゃがじゃないけども」
「そうだね、試したことないから楽しみだね」
すると琢磨が格言を言うように、
「じゃがナシ、オミソナシ」
「いや! 私はありだわ! 煮ても崩れなさそうとか私の案だわ!」
「オミソ、手柄ナシ」
「何で手柄ナシになるんだよ! キクイモ上手くいったら履歴書にも書いてやるからな!」
「オミソ、犯罪歴ちょっとだけアリ」
「無いよ! 全く無いから! おまんじゅう泥棒とかしたことないから!」
「オミソ、犯罪歴ちょっとだけナシ」
「どういう日本語だよ! 本気でナシだわ!」
琢磨はヘラヘラ笑っていて腹が立つ。
今、琢磨のこと殴って犯罪歴作ってやろうか、作らないけどね!
そんなこんなで、カフェにノーマルお客さんもやって来て、その接客などをしていたら、あっという間に圧力鍋肉じゃがの完成の時間になり、琢磨はちょうど接客中だったので、先に私だけチェックすると、目を丸くしてしまった。
あー、こりゃ履歴書に書けないわー。
キクイモを箸で持とうとすると、皮がしゅぷっと潰れて、中身がとろとろと溶けだしていくのだ。
全然パリパリ感って持続しないんだ、むしろジャガイモよりもとろとろというか。
軽く味見をしてみると、優しい甘みが口いっぱいに広がり、喉越しがめっちゃ良い。パリパリの真逆だ……いやいや、むしろ良いんじゃないか?
なんというか歯茎だけでも噛めるような柔らかさで、キクイモだけでとろみバッチリだから、介護食とかにも良さそう。
接客を終えた琢磨が戻ってきたので、現状を報告すると、琢磨は、
「めっちゃ良いじゃん! じゃあもう一回キクイモをカットしないで作ってみるか!」
二人で改めて、キクイモをカットせず、肉じゃがを作り、完成したところで食べてみると、琢磨はサムアップしながら、
「うん! 皮に包まれていてもちゃんと中はとろとろになっている! これは何かちゃんとした料理になるな!」
私も同意しながら、
「アレルギー的にはゴボウとか春菊と同じ部類で、ゴボウ系なんだけども、味はなんというか里芋みたいというかそれ以上の甘さがあるね!」
琢磨はノリノリで、
「もっといろんな料理考えてみようぜ!」
私もうんと強く頷いてから、
「ふかすとどうなるかな? 蒸すというか」
琢磨が嬉しそうに、
「いっぱい味見しよう!」
と言ったので、そこは、
「イヌリンという食物繊維の成分がお腹を緩くすることもあるからほどほどにね」
と言ってあげると、琢磨は目を輝かせながら、
「アレルギーもそうだし、めっちゃ調べていて、本当にオミソは真面目だな!」
真面目って……何か、ガリ勉みたいで少し嫌かも……こういう遠回しの悪口が本当に得意だなぁ、琢磨って。
琢磨はまだ喋っていて、
「尊敬するよ! そういうとこ!」
と念を押してきて、裏のある言いっぷりばかりしてきて、ちょっとは真正面から褒めてもいいのにと思ってしまった。
まあそんなこと期待しても無駄な人間か。仕方なし。
蒸しも完成し、私の独断で軽く塩を振って食べてみると、琢磨は「おー!」と言ってから、
「めっちゃ美味しい! キクイモ自体に旨味があるから軽く塩だけで全然美味しい! ジャガイモとかよりも好きかも!」
私も食べてみて、ちゃんと美味しくなっていて、まさかこんな活用法がキクイモにあったなんてと驚く。
次の日、イノッシくんが来たところで、昨日作ったようなキクイモ三昧のメニューを出すと、イノッシくんは嬉しそうに、
「これすごい! こんなとろとろになるなんて思わなかった! で! どうっ?」
何だか得意げにそう言ったイノッシくん。
確かにカフェのメニューとして考えても良さそうだけども、
「これなら、料理の仕方を言ったうえで、料亭とかにプレゼンしてもいいかもね」
と私が言うと、イノッシくんは嬉しそうに、
「かも! そうだ! そうだ! これも! これも!」
と言ってイノッシくんは持ってきていたリュックから、何かビニール袋を取り出した。
そこには白い粉が入っていて、何だろうと思っていると、イノッシくんが、
「親戚に言ったら、これもどうにかしてほしいと言われて!」
「「これも……?」」
と私と琢磨の声がユニゾンした。
イノッシくんは続ける。
「これキクイモの粉だよ! どう!」
”どう”って……さすがにキクイモの粉末は、本当にどうすれば……と思っていると、琢磨が、
「まあちょっと考えてみますかっ」
と私のほうを見ながら言ってきて、正直イケるかなぁ、と不安になっていると琢磨が、
「オミソと俺なら絶対何か浮かぶって!」
と言ってきて、その根拠無い自信につい吹き出してしまうと、琢磨が満面の笑みで、
「やってみよう!」
まあそこまで言われたらと思って、今度はキクイモの粉末に取り掛かることにした。
イノッシくんも帰っていき、まずはちょっと味見してみることにした。
琢磨がうんうん頷きながら、
「ほんのり甘いな」
私はふと、
「普通にほんのり甘い粉、なんというか砂糖の代替みたいな売り文句を付ければいいんじゃないの?」
「アリだな、オミソ商才アリ、だな」
「昨日のノリ復活? というか褒めるパターンあるんだ」
「俺は結構オミソのこと褒めてるつもりだけども」
「全然。需要と供給が一致していません」
「どんだけ需要あるんだよ」
と琢磨が笑ったところでハッとした。
何か琢磨からめっちゃ褒められたいみたいじゃん。
全然そんなことないのに。
「ゴメン、需要ゼロでした。琢磨の褒めは何か気持ち悪いのでいりません」
と言うと、琢磨は急に申し訳無さそうに、
「そっか、ゴメン……」
と肩を落としたので、さすがに気持ち悪いは言い過ぎだったかもと軽く反省して、
「気持ち悪いはまあ言い過ぎだけども、ちゃんと真っ直ぐ褒めるなら褒めていいよ。でも遠回しの嫌味とかは本当に良くない!」
と昨日のことを思い出しながら言うと、琢磨はパァッと明るい顔をして、
「そっか! まあ嫌味とかそんな言ってるつもりもないけど、そう感じさせないように頑張るわ!」
全く、琢磨少年は少年なので、はっきり言ってあげないとね。オトナの私は本当に気を遣う中間管理職ですわっ。
私は、あとって感じで、
「妻籠宿は五平餅が人気だからさ、クルミの素朴さをメインでやっているところなら砂糖の代わりにキクイモの粉末とか本当に良いかも。糖の上昇を緩やかにするなら甘いものに使うのがいいかも」
琢磨は目を丸くして、
「本当オミソはアイデア豊富ですごいよなぁ」
と感嘆の息を漏らしたようだったけども、そもそもオミソと言われた時点で半ディスりのような気もする。
真っ直ぐ美園と言えばいいんだけどなぁ。だからって別に琢磨から名前で呼ばれたいわけじゃないけども。どうでもいいヤツだから。
そんな感じで、砂糖の代替として甘いタレや生地に混ぜるという案をたくさん考えて、この日は終わった。
また次の日にイノッシくんに伝えると、イノッシくんは上機嫌に帰っていった。
結局キクイモをカフェにおろすみたいな話にはならなかったけども、イノッシくんからは親族共々商売が上手くいっているという報告をもらい、良かったんだとホッとした。



