高校にいる時間は心臓が休まらないんです。
お昼休み以外も、剣崎先輩とはち会わないよう注意しながら校内を歩いている私。
たとえ遠くでも剣崎先輩が瞳に映ったらすぐに隠れるようにしている。
直接何かされてはいないけれど、生徒会長ファンの女子たちに睨まれるのも精神的なダメージが大きくて。
だから人生の先輩でもある大学生のお兄ちゃんに勇気を出して相談したのに「餌付け? なにそれ」と苦い顔をされてしまった。
「剣崎唯人って言ったら、リゾートホテルをバンバン建ててる超有名企業の御曹司じゃん」
「顔が良くて頭もよくて性格もいいって、高校の女子たちに大人気の生徒会長なんだけど」
「そんな奴がうちの妹を気にいるか? 家で飼ってる猫と奈乃が似てるとかそんなんじゃん? 知らんけど」
「私は真剣に相談してるの」
「奈乃のノロケに付き合ってる場合じゃない。佳織のとこに行かないと」
ここはライブハウス。
満員御礼というべきお客さんだらけの立ち見スペースの真ん中あたり。
私を置いて彼女のもとに行こうとするお兄ちゃんの、シャツの袖を強く引っ張る。



