「え?」と戸惑う剣崎先輩の口元に、ケーキが乗ったスプーンを近づける。
「奈乃ちゃんは食べてくれないの?」と悲しそうに揺れる瞳。安心させたくて、髪を揺らしながら微笑んだ。
「憧れていたんです。ファーストバイト」
「結婚式で新郎新婦がケーキを食べさせ合う儀式のこと?」
「素敵じゃないですか?」と、さらにケーキを剣崎先輩の口に近づける。
急に剣崎先輩の頬が真っ赤に色づいた。
「それって……永遠の愛を誓うものでしょ……」
恥ずかしそうに口元を手で隠している。
好きという想いを瞳にめいっぱい込め、伝われと願いながらさらに口角を上げる。
「私は一方的に餌づけされる関係より、おいしいものは一緒に味わいたいなって思うんです」
「奈乃ちゃんの言うとおりだね。おいしいものも楽しいことも、二人でわかちあったほうが幸せをより感じられるね」
私の思いが通じた気がした。
幸福感が体中をめぐりだしてしまう。
ケーキが乗ったスプーンを持つ私の手を包み込んだ剣崎先輩。
彼の真剣な瞳に私だけが映っている。



