戸惑う私の瞳いっぱいに、綺麗な顔をほころばせる剣崎先輩が映り込んでいるから心臓に悪い。
優しい笑みを深めた剣崎先輩の顔面破壊力って、心停止レベルだよ。
心臓を大事にしたいなら、長生きしたいなら、剣崎先輩の麗しい微笑みは瞳に映さないのが身のためだと思う。
「奈乃ちゃん、またね」
まるでレッドカーペットを歩くハリウッドスターのよう。
剣崎先輩は机と机の間を優雅に進み、廊下に出たところで振り返り私に手を振ると、剣崎先輩見たさに集まっていた女子たちに微笑みながら自分の教室に帰っていった。
そして椅子に座ったまま放心状態の私はというと――
「奈乃ちゃん、剣崎先輩と付き合ってるの?」
「生徒会長に彼女が! イヤァァァ! でも奈乃ちゃんなら許せる」
「大丈夫だよ、学校の女子に嫉妬されてもうちらが守ってあげるからね」
優しいクラスの女子たちに囲まれ、勘違いされ、架空の恋を応援されてしまったのでした。
これって夢だよね?
夢であってください。
明日のお昼休みにまた剣崎先輩が現れたら、高校に来るのが怖くなっちゃいそう。



