「はいこれ」
取っ手つきの白い箱を手渡された。
「開けてみて」と優しく微笑まれ、地面にお尻を預けたまま止めてあったシールをはがして箱を開く。
「これって」
「調理実習で作ったイチゴのショートケーキ。良かった、形が崩れてない」
手のひらサイズの丸いケーキは生クリームでデコレーションされていて、真っ赤なイチゴが乗っている。
「剣崎先輩が作ったんですよね。私がもらっていいんですか?」
「もちろんだよ。奈乃ちゃんのことだけを思って作ったからね」
嬉しくて緩みそうになる涙腺。
「これが最後の餌付けだから」と瞳を陰らせた剣崎先輩は、「今までごめんね。奈乃ちゃんの迷惑を考えずに教室におしかけちゃって」と泣きそうな顔で私に微笑んだ。
確かに迷惑だとは思った。
大人気生徒会長の剣崎先輩が現れるだけで、クラスメイト達が私に大注目をする。
剣崎先輩の手から甘いものを食べさせてもらうたびに、恥ずかしさで心臓が過労死しそうになっていた。
高校には剣崎先輩ファンがたくさんいて、校内を歩くと睨まれたり陰口を言われたりもあった。
でも……今の私の思いは……



