「こんなに沼るとは思ってもいなかったけどね」と優しく微笑んだ剣崎先輩は、大事な過去を思いだしているかのように空を仰いだ。
「中学生の時に奈乃ちゃんを見かけたんだ。友達に微笑む表情が柔らかくて。かわいい子だなって」
本当に一目ぼれなの?と、驚きでさらにまぶたが開く。
そんなはずはない。
いつもノーメイクでオシャレでもなんでもない私。
秀でている部分もない。
私なんかより笑顔が可愛い子はたくさんいる。
「ここがお花畑だったら、この子の周りには蝶や鳥や動物が集まりそうだな。直感でそんなことまで想像しちゃった自分が面白くて、離れたところで奈乃ちゃんを見ながら自分に笑っちゃった」
誉められたのがくすぐったくてたまらない。
顔の温度がジリリと上昇したのがわかる。
「でもその直後にね」と声を低くした剣崎先輩は「もっと深いところまで奈乃ちゃんに落とされちゃったんだよ」と表情を引き締めた。
「私……何かしましたか?」
「友達を守ってた」
いつのことか思い出せない。



