「醜い感情の塊でできたエースの存在自体、奈乃ちゃんに知られたくなかった。だから高校から遠いライブハウスで活動をしていたのに」
「偶然好きな子がライブに来ちゃったわけね。で、他の男に連れ去られそうになっていたところを助けちゃったと。ライブ中にもかかわらず」
「見た目からしてヤバそうな男だった。奈乃ちゃんも嫌がっているように見えたんだ」
「まぁ」と鼻で笑ったクイーンは
「人の目を気にせず助けに行ったあなたには拍手を送ってあげる。よくやった、姫を守る騎士だったわ」と手を叩いた後
「でもさ、俺の彼女ってエースが叫んだからややこしくなっちゃったんでしょうが!」
拳を俺の腕にめり込ませてきた。
「願望がもれたんだよ」とふてくされた俺に、「アハハ、どれだけその子に沼ってんのよ」とクイーンはお姉っぽく笑っている。
「で、どうするの」
「奈乃ちゃんを傷つけたくない」
「身を引くんだ。けなげぇ~」
語尾に塗りたくられていた俺への嫌味にイラっとするも、言い返す言葉が見当たらない。



