「エースは闇の顔なんだ」
私の耳だけに落ちてきた苦しそうな声。
同一人物なの?と問うように顔を上げると、言いたいことが分かったのかエースさんは静かにうなづいた。
「だましていてごめんね」
その顔が高校での優しい剣崎先輩と重なる。
剣崎先輩は私をだましたりなんかしない。
あんなに優しい人だから絶対にしない。
そう信じたいのに、彼への不信感が心の底に根付いてしまう。
エースさんは腕に絡みついていた女性を振りほどくと、辛そうな顔で関係者入口のドアを開け奥に消えていった。
「なんで私を置いてくのよ。この先は入れないじゃない」と怒鳴った美女が、悔しそうにドアを叩いている。
私は騙されていたんだ、剣崎先輩にもエースさんにも。
自己嫌悪とやるせなさで溜息が止まらない。
私は涙でぐちゃぐちゃになった顔を手で覆い、ライブハウスを後にした。



