「エース様の彼女があの子って、がっかりじゃない?」
「彼氏が大人気バンドマンのエースなら、釣り合うように自分磨きするよね普通」
「ノーメイクで安っぽいワンピース着ちゃってさ、ほんとダサ」
「すぐに飽きられるっしょ」
「それな」
悪意のある言葉たちが私の耳に飛びこんでくる。
エースさんと釣り合ってないことぐらい、自分が一番わかっているよ。
心臓の痛みが限界に達し、涙腺が緩む前にロビーに逃げた。
私はエースさんの彼女じゃないんだってば。
心の中の悲しみ泣く自分と向き合うように、しばらくはロビーの壁に背中を預けていたら――
「いつなら私を可愛がってくれるの?」
「ライブの後」
聞き覚えのある低音が私の耳に飛び込んできて、慌てて顔を上げる。
奥から歩いてきたのはエースさんだ。
ステージ衣装の黒い騎士服をまとい、サラサラの黒髪に目元を隠した仮面が似合いすぎている。
隠れなきゃ、柱の後ろに。
急いで存在を消したのは、エースさんが女性の肩を抱いて歩いているからだ。
体を密着させるほどの親密具合から、恋人にしか見えない。



