エースさんの腕が緩んだ。今がチャンスと体を離す。
見上げると綺麗な顔がそこにはあって、仮面で目元は隠れているけれど鼻と唇と仮面にかかるサラサラの黒髪だけでイケメンなのがはっきりとわかる。
あれ? この唇の形、どこかで……
「俺の彼女なんだから次回のライブも見に来て」
「え?」
「約束」
そっけない声のあと私の頭を手でポンとしたエースさんが、ステージに戻っていく。
もう一度言われた。
みんなの前で。
俺の彼女って……
ドギマギ暴れる心臓に手を当て、遠のいていく彼の背中を見つめることしかできない。
「エースが戻ってきたことだし、ロイフラの泣きキュン神曲を披露しちゃうわね」
ベースをさげた王妃様のような美女がステージから客席にウインクを飛ばし、お客さんは「待ってました」の大合唱。
ライブハウス内にしっとりとしたバラードソングが流れ始めたけれど、エースさんの切ない歌声はずっと聞いていたいほど心地いいものだったけれど、お客さん達の視線に耐えきれなくなった私はライブハウスから逃げだしたのでした。



