ためらうようにドラムやベースなどの音が消え、演奏が止まった。
楽器の音色が一切しなくなり
「今叫んだの、エースさんだよね」
「彼女って言った? どこどこ? だれだれ?」
お客さんの戸惑いで、暗くて狭い箱の中がガヤついている。
ギターとマイクをメンバーに押しつけたエースさんがステージから飛び降りた。
お客さんをかき分けながらこっちに向かってくる。
私を助けに?
まさか、そんなはずはない。
そう思うのに、さっきまでステージでギターを弾きながら歌っていたエースさんが足を止めたのは私の前だった。
「もう一度言う。俺の彼女から手を離せ」
どすの効いた重低音。
目元が隠れる仮面で瞳は見えなくても、エースさんの怒りが沸点に達しているのがわかる。
「まさかオマエ……ロイフラのエースの女?」
青ざめた男がおどおどと私を見た。まるで絶望しているかのよう。
腕が緩んだすきに男の腕の中から逃げ出す。
涙がひかない潤んだ瞳で、助けてくれたエースさんを戸惑い見た。



