「手持ちがそんなになくて……お兄ちゃんに連絡して……」
「近くの駐車場に車を止めてある。金には困ってないから、付き添いだけよろしく」
「わかりました」
責任感から頷いてしまったけれど、次の瞬間に肝が冷えた。
……え?
「まともに歩けないって重症だよな。肩かりるわ」
私の背中を骨ばった大きな手のひらが這っている。
なんか気持ち悪い。
手のひらが肩にたどり着き、男の腕に圧迫されるように横抱きをされた。
嫌だ。怖い。離れて欲しい。
でもけがをさせちゃったのは私だ。
これは下心じゃなくて、けが人のサポートだと思わなくちゃ。
「んじゃ、ライブハウスはおさらばってことで」
大股で歩き出した男性。
連れ去られるように、私の足も戸惑い動く。
さきほど私が出て行こうとしたドアのノブを男が掴んだ。
ロビーの光が入り込み、男性の顔がくっきりと浮かび上がっている。



