よろけた男性が腕を押さえながら、顔を歪ませている。
明らかに怖そうな見た目。
いかつく見えるのは、筋肉隆々の腕に彫られた入れ墨と鼻ピアスのせい。
ガタイがよく太い眉も目尻も吊り上がっているから、野生のクマに遭遇してしまったような恐怖が背中を駆けあげってくる。
「ごっ、ごめんなさい」
「オマエがぶつかってきたせいで、腕がドアの枠んとこにガンって当たったんだけど!」
大声で怒鳴られ「ごめんなさい、ごめんなさい」と謝罪を連呼する。
「マジで痛い、ぜってぇ腕の骨折れてる!」
骨折?
私がちゃんと前を見ていなかったせいだ。
どうしよう。
「病院に行った方がいいですよね」
「連れてってくれるわけ?」
「もちろんです。私のせいなので病院に付き添います。整形外科でいいのかな。行きつけの病院はありますか」
「あるある」
「なんていう病院ですか? 土曜日でも見てくれますか?」
「全然オッケー。でも遠いんだよな」
高2の私は運転免許なんて持っていない。
タクシーに乗るとして、お金は足りるかな。
病院代だっていくらかかるかわからないし。



