スッと立ち上がったお兄ちゃん。
「ロイフラのライブ楽しめよ」とわたしの肩を叩くと、お客さんをかき分けライブ会場の外に出て行っちゃったんです。
お客さんだらけの立ち見スペースに取り残された私。
ハード系の曲が駆ける薄暗くて狭い箱の中で、はしゃぐお客さんの腕や肩がぶつかってくる。
大勢が盛り上がる中、一人ぽつんはさみしいんだってば。
彼女のバンドがトップバッターで出るから一緒に来てとお兄ちゃんにお願いされ着いてきたけれど、私はバンドというものに興味がない。
騒ぐタイプでもない。
控えめな性格だから、ファンたちの熱のこもったジャンプジャンプのノリにどうしてもついていけない。
「やっぱり帰ろう」
熱いステージに背を向け、全力ではしゃぐ群れからなんとか抜け出す。
立ち見スペース後方はお客さんがいなくて、ライブハウスになじんでいない私でも息が吸いやすい。
出口のドアノブに手をかけようとした時、ドアが開き目の前に大柄な男性が現れた。前に進む勢いが止められない。
「わっ」
後頭部が男性の胸もとに突き刺さってしまった。
「痛ったぁ」



