6月の、どこか憂いを帯びたような太陽の光が差し込む教室。
私は教室の後ろの方でカフェオレとルーズリーフと筆箱を広げ、授業内容をメモしている…わけではなく、小説のことを考えていた。
今考えているのは、『太陽新幹線』という小説の構想。
中3の時の理科の授業で、『地球から太陽まで新幹線で行こうとすると、約57年かかる』と先生が話していたのを思い出して、構想を練っている。
主人公は中3の詩織。授業中にペンを落として、拾おうとすると『太陽新幹線特別ご優待券』という謎の紙を見つける。
とりあえず優待券を持ち帰った詩織がその紙をごみ箱に捨てようとすると、彼女は太陽新幹線の車内に飛ばされてしまう。
混乱する詩織だったが、ゆかいな仲間たちと親睦を深めていく…という至ってつまらない物語だ。
ふわぁ、とのんきにあくびをして窓の方をちらりと見やると、そこには風に流れる雲をバックに、パンをかじりながら歩いている彼がいた。
ひゅっ、と喉が鳴ると同時に、私の頭には映画の回想シーンのように彼との出会いのシーンが再生され始めた。



