白い女

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悠聖を寝かしつけた私はようやく帰宅した悠作の夕食を並べて、ダイニングテーブルの真向かいに腰掛けた。

「お、オムライスか。美味そうだ」

大手銀行の課長をつとめる悠作の帰りはいつも遅い。

「ねぇ、悠作。ラインしたお向かいさんの事なんだけれど……」

「ああ。預かってもらったお向かいさんか。俺は結局ご挨拶しそびれたままなんだよなぁ。どうかした?」

「それが……悠聖に対しての行動がちょっと異常だなって」

「ん? 異常?」

私は悠作にスウェットの話や悠聖との距離の近について思ったままに話した。

「なるほどね。でも俺からしたら里奈が気にしすぎなんじゃないかって思うけどね」

「親の知らないところで、よその子に毎日話しかけてたり、名前で呼ばせたりなのよ?」

「うーん……、登下校の見守りついでに悠聖と話したり、遊びに行かせてもらった際に、不要な洋服をくれただけだろ?」

「でも一度だけ悠聖のことを春人って呼んだのよ?他人(ひと)の子を我が子の名前と呼び間違えるなんて……」

「まぁまぁ同い年だし。お子さん入院中なんだって? 我が子に日頃の会えてない訳だから寂しさもあって……悠聖に重なる部分も大きいんじゃないのか?」

「私は……どんな時でも子供の名前を間違えない自信があるわ……」

悠作が頭を掻くと困ったように眉を下げた。

「ま、里奈は、元々神経質な所があるからな。此処は田舎だし……尚更かなぁ。てゆうか、そのお向かいさんの名前は?」

悠作は空になった器にスプーンを置くと、ご馳走様でしたと手を合わせた。そしてテーブルに置いてあったテレビのリモコンに手を伸ばす。

「杉原美穂子さんっていうの」

「え?」

私の言葉に悠作の動きがピタリと止まった。