夜明けが世界を染めるころ

気づけば、第一王子暗殺未遂事件から1週間。
結局 ウェイターは口を割ることなく、自害したとの知らせがきた。
デホラ男爵とその娘ニーナは、財産や地位を全て取り上げられて辺境の地で過ごすこととなった。
でも、まあ命があるだけマシだろう。

殿下の暗殺未遂事件以降 街で騒がせていた宝石事件が少し落ちついたところだ。

まだ何も解決していないが…
そんな中 第3騎士団騎士団訓練場にて新人のアレンと手合わせ中。



「アレン、もっと足踏み込んで、甘いよ!」

「は、はい!」

「ほら、そこ遅いよ!」

「は、はい!」
アレンは息を切らしながらも必死に食らいついてくる。

その様子を他の団員たちが遠目で見守る。

「なんだか今日、お嬢様キレッキレだなー」

「俺も次、手合わせしてもらおう!」

「みんなよくお嬢様に剣向けられるよねぇ……俺は絶対無理だ」
テオが頬杖をつきながらつぶやく。

「そうですか?でも、俺も最初は怪我させたらどうしようって心配してたけど、それよりもお嬢様が強すぎて余計な心配でしたよ。
テオさんなら、上手にコントロールして怪我させないようにできそうですけどね」

団員たちはうーんとうなりながら、改めてティアナの実力を感じる。

「当たり前でしょ。お嬢様に怪我一つなんてさせない。
他の団員たちがそんなことしたら許さないよ。俺がぶちのめしてあげる」

テオの鋭い瞳と低い声色に、周囲の団員たちが一斉に「ヒィ……」と小さな悲鳴を上げる。

「そういう意味じゃなくて…
お嬢様に剣を向ける行為そのものが、そもそも無理なんだろ」

セナが静かにテオの横へ歩み寄る。

「は? セナ副団長に知ったかぶりされたくないんだけど」

「……いちいち生意気なやつだな」

「あ、でもさ」
テオは急に表情を緩め、どこかうっとりとした顔になる。

「お嬢様と試合したら、俺のことだけ見て、俺の動きだけ考えてくれるんだよね。
それって、すごく良くない?」

その場の空気が、一瞬ひやりとする。

「……重い愛だな」
セナがぼそりと呟く。

他の団員たちも、無言で深く頷いた。