夜明けが世界を染めるころ

黒いモヤが室内を渦巻く中、ニーナは暴れ続けている。
その宝石から放たれる黒い気配は、見るからに異常で、触れるだけで冷たい圧力が心臓に響く。

入ってきた騎士団達もどう動けばいいか戸惑っている状況だ。

さすがにこの人数の中で浄化の力を使うのは目立ちすぎる…
だけど殿下に何かあっては元も子もない。
覚悟を決め、ドレスの裾に隠していた短剣を触ろうとしたところ。

「ティアナ嬢 下がってください」
静かな声。だが、その中に隠された威圧感は、暴れるニーナを一瞬で止めるほどの力を持っていた。

ニーナは宝石を握りしめ、震える手で何度も声をあげる。
黒いモヤはますます濃く、部屋の空気がどよめく。

殿下は腰から剣を抜く。

「我が剣に従え アレキサンドライト!」

冷たい空気に包まれた室内で、剣の先が金色に光る。
その鋭い剣が宝石に向かう。

ニーナはまだ膝をついたまま、恐怖で顔を覆っている。
黒いモヤが揺れ、宝石が微かに光を反射する。

剣が宝石を捉えた瞬間、あっという間に黒いモヤが一気に弾けるように消えた。
鋭い音とともに宝石は砕け散り、小さな破片と光が床に散る。

さすが殿下だ…私の癒す 浄化とは違う。
圧倒的強さを持つ光の剣。

殿下は静かに剣を納め、私のほうに向き直る。

「もう安心だ。危険はない」
その穏やかで確信に満ちた声に、自然と肩の力が抜けた。

ニーナはまだ震えているが、黒いモヤは完全に消え、宝石の破片だけが残る。
「……殿下、本当に……」

ニーナが口を開く。
殿下はわずかに微笑むだけで、余計な言葉はなかった。
その冷静さと圧倒的な力に、改めて目が離せなくなる。


王国騎士団がニーナを連れて部屋から出ていった。