夜明けが世界を染めるころ

「俺は、ティアナ。
君が好きだ。

君以外が隣にいる未来など、考えられない」

月明かりの下で、ディランはまっすぐに言った。

「俺の弱さも、狡さも。
王子という立場の裏で、何度も迷ってきたことも――
全部知った上で、隣に並んでくれた」

一度、息を整える。

「最初から俺自身を見てくれた君に、
……どうしようもなく、惚れているんだ」

胸が、熱くなる。
私もちゃんと伝えなければ…。
スッと息を吸う。


「……はじめは、ディランのこと、正直気に入らなかった」

「それはまた、手厳しいな」

小さく笑う彼に、私は首を振った。

「本音を上手に隠して、冷めていて。
何をするにも完璧で……近寄りがたい人だと思ってた」

けれど。

「本当のあなたは、完璧な王子なんかじゃなかった」

視線を上げる。

「みんなと無邪気に笑って、
どうでもいいことで意地になって、拗ねて」

言葉を選びながら、続けた。

「優しくて……やっぱり、強い人だった」

胸の奥に溜めていた想いが、静かに溢れる。

「私、ディランが好き」

はっきりと、告げた。

「この先も、あなたと一緒にいたい」

一拍。

「……だけど、王妃になる覚悟は、まだない」

沈黙が落ちる。

拒絶でも、逃避でもない。
ただ、正直な気持ちだった。

ディランは何も言わず、
そっと腕を伸ばす。

引き寄せられ、胸に額が触れた。

強くもなく、弱くもない――
包み込むような抱擁。

「……それでいい」

低い声が、髪越しに落ちてくる。

「今、覚悟がないなら、無理に背負わなくていい」

抱く腕に、ほんの少しだけ力がこもった。

「王妃になれ、なんて言わない。
俺が好きなのは“肩書き”じゃない。君だ」

胸の奥で、何かがほどけていく。

「隣に立てる日が来るなら、その時でいい」

そっと、囁く。

「それまでは――
俺が、君の隣に立つ」