夜明けが世界を染めるころ

3週間ほど静養し、
ようやく日常が戻りつつあった。

騎士団の訓練場では、いつもの掛け声と剣戟の音が響いている。

セナ、テオ、アレン、ロベルト――
皆、何事もなかったかのように任務をこなしていた。

……ただし。

私の姿を見つけた瞬間を除いては。

「――お嬢様!?」

真っ先に声を上げたのはテオだった。

「大丈夫? まだ休んでた方がいいよ…!」

距離を詰めかける彼の前に、すっと腕が伸びる。

「近づきすぎだ、テオ」

セナが肩を掴み、静かに制した。

「……お嬢様を困らせるな」

「え、だって心配じゃん!
 俺もお嬢様のそばに――」

「却下だ」

即答だった。

「ケチ!」

そのやり取りを横で眺めながら、

「はは……相変わらずですね」

アレンが苦笑交じりに笑う。

「まあ、元気そうで何よりだ。顔色も悪くないな」

ロベルトも笑う。

「うん、もう平気!」

そう答えると、テオはほっとしたように肩を落とした。

「……ほんとに、よかった」

セナも小さく息を吐き、視線を逸らす。

「無理だけは、なさらないでください」

その言葉は短いが、確かな気遣いが滲んでいた。

訓練場に、少しだけ柔らかな空気が流れる。

失ったものは確かにある。

けれど――
守り抜いたものも、確かにここにあった。



その後も日常は続く。

お医者様にも見てもらい異常はないのだが
ユウリとアリスは相変わらず私の体調管理に余念がなく、


「少しでも異変があればすぐに」

「無理は厳禁ですから」

と、2人そろって念を押してくる。

レオは厨房で腕を振るい、

「回復期は食事が命ですからね!」

と笑いながら、滋味深い料理を並べてくれた。

ルイもブティック・グロウへ戻り、

「開けてた分、仕事が大変なのよ〜!」

と言いつつ、その顔はどこか楽しげだった。

私は宝石鑑定の仕事や家の仕事も少しずつ再開し、
静かに、確実に、日常へと戻っていった。