夜明けが世界を染めるころ

ティアナは安らかな闇へと落ちた。

倒れゆく身体を、
ディランが咄嗟に抱きとめる。

「……ティアナ!」

呼びかけに返事はない。

胸元に耳を寄せ、
かすかな呼吸を確かめると、彼は小さく息を吐いた。

「……無事だ。息はある」

その言葉に、張り詰めていた空気がほどける。

「お嬢さんよかったよー!」

レオが膝をつき、
震える手で額を押さえた。

セナは静かに剣を納め、
彼女の顔を見下ろして目を伏せる。

「……よく、耐えたな」

テオは心配そうに覗き込む。

「無茶しすぎだよ…ほんとに」

ルイはそっと外套を外し、
ティアナの肩へ丁寧にかける。

「冷えちゃうわ。戦いの後は、特にね」

ユウリは魔力の流れを確かめるように手をかざし、
穏やかに頷いた。

「命の危険はありません。深い疲労と……共鳴の反動です」

アリスはすぐに膝をつき、
彼女の手を両手で包み込む。

「……大丈夫ですよ。ちゃんと、戻ってきます」

レイは少し離れた位置で一礼し、
戦場全体を見渡した。

「終わりましたね。すべて」

アレンとロベルトも、
黙って強く頷く。

崩れていた世界は静まり、
もはや敵の気配はどこにもない。

朝日は、もう高く昇り始めていた。

夜は完全に明けている。

だがティアナはまだ、
その光を知らない。

ただ――

彼女の唇には、
ほんのわずかな笑みが残っていた。

まるで、
大切な人と再会した夢を見ているかのように。

ディランはその表情を見つめ、
そっと額に自分の額を触れさせる。

「……おかえりを言うのは、目を覚ましてからだな」

風が、静かに吹いた。

夜明けの匂いを運ぶ、優しい風だった。

戦いは終わった。

そして――

彼女の物語は、
まだ、続いていく。