だが――
それで、すべてが終わったわけではなかった。
砕け散ったはずの魔核の欠片が、
静寂の中で、ひとつだけ淡く脈打つ。
まるで、消えきれぬ想いが
最後の呼吸を求めるかのように。
共鳴の光が、ふと揺らいだ。
攻撃のために研ぎ澄まされていた旋律が、
わずかに――悲しみを帯びる。
その瞬間。
胸に、
異物のような感覚が流れ込んだ。
――映像。
⸻
剣を振るう少年がいた。
誰よりも早く訓練場に立ち、
誰よりも遅くまで剣を振り続ける背中。
掌の血を隠し、
ただ「王になる」と呟いていた。
努力すれば、報われると信じて。
だが、彼の瞳は王の色ではなかった。
王家に連なる者に現れる
アレキサンドライトの色ではなく、
灰を帯びた深い色。
魔力資質もまた、
人を導く光ではなく、
敵を屈服させる“制圧”に偏っていた。
「王の器ではない」
その宣告は、
才能でも行いでもなく、
生まれそのものを否定する言葉だった。
それでも彼は剣を振った。
剣しか、残されていなかったから。
戦果を重ね、
軍を率い、
誰よりも国を守った。
だが王位継承の場で告げられたのは――
「ガイル 継承権より除外する」
理由はただひとつ。
瞳の色と、資質。
それだけだった。
数年後。
大広間に、祝福の鐘が鳴る。
次期王位継承者として呼ばれた名。
「ディラン・アレキサンドライト」
若く、未熟で、
それでも確かに王の瞳を宿す甥。
アレキサンドライトの瞳の色。
人を惹きつけ、導く資質。
歓声の中、
ガイルは列の端に立っていた。
拍手を求められ、
笑みを作らされ、
祝福の言葉を口にした。
――なぜだ。
自分の方が、
長く血を流してきた。
それでも王に選ばれたのは、
“生まれ持った光”を持つ者だった。
胸に生まれたのは、怒りではない。
憎しみでもない。
嫉妬だった。
努力では届かない場所への、
どうしようもない渇望。
認められなかった心が、
静かに歪んでいった。
⸻
記憶は、そこで終わる。
怪物の姿ではない。
玉座を見上げる、
一人の男の背中だけが残った。
王になりたかったのではない。
ただ――
王として、認められたかった。
それで、すべてが終わったわけではなかった。
砕け散ったはずの魔核の欠片が、
静寂の中で、ひとつだけ淡く脈打つ。
まるで、消えきれぬ想いが
最後の呼吸を求めるかのように。
共鳴の光が、ふと揺らいだ。
攻撃のために研ぎ澄まされていた旋律が、
わずかに――悲しみを帯びる。
その瞬間。
胸に、
異物のような感覚が流れ込んだ。
――映像。
⸻
剣を振るう少年がいた。
誰よりも早く訓練場に立ち、
誰よりも遅くまで剣を振り続ける背中。
掌の血を隠し、
ただ「王になる」と呟いていた。
努力すれば、報われると信じて。
だが、彼の瞳は王の色ではなかった。
王家に連なる者に現れる
アレキサンドライトの色ではなく、
灰を帯びた深い色。
魔力資質もまた、
人を導く光ではなく、
敵を屈服させる“制圧”に偏っていた。
「王の器ではない」
その宣告は、
才能でも行いでもなく、
生まれそのものを否定する言葉だった。
それでも彼は剣を振った。
剣しか、残されていなかったから。
戦果を重ね、
軍を率い、
誰よりも国を守った。
だが王位継承の場で告げられたのは――
「ガイル 継承権より除外する」
理由はただひとつ。
瞳の色と、資質。
それだけだった。
数年後。
大広間に、祝福の鐘が鳴る。
次期王位継承者として呼ばれた名。
「ディラン・アレキサンドライト」
若く、未熟で、
それでも確かに王の瞳を宿す甥。
アレキサンドライトの瞳の色。
人を惹きつけ、導く資質。
歓声の中、
ガイルは列の端に立っていた。
拍手を求められ、
笑みを作らされ、
祝福の言葉を口にした。
――なぜだ。
自分の方が、
長く血を流してきた。
それでも王に選ばれたのは、
“生まれ持った光”を持つ者だった。
胸に生まれたのは、怒りではない。
憎しみでもない。
嫉妬だった。
努力では届かない場所への、
どうしようもない渇望。
認められなかった心が、
静かに歪んでいった。
⸻
記憶は、そこで終わる。
怪物の姿ではない。
玉座を見上げる、
一人の男の背中だけが残った。
王になりたかったのではない。
ただ――
王として、認められたかった。
