夜明けが世界を染めるころ

仲間が集まってきたが赤黒い魔力が床を這い、魔女の雫から生まれた異形が次々と再生している。


「……数が減りませんね」

ユウリは一歩前に出る。

背後では、ティアナとディランが敵を薙ぎ払っていたが――
倒しても、床の魔法陣が再び魔力を吸い上げ、新たな個体を生み出していく。

「核は装置ではない」



魔力の流れ。
回路の歪み。
結界の重なり。

すべてが、わずかに狂っている。

「……なるほど」

彼は静かに剣を抜いた。

装飾を排した、実用一点の細身の剣。

柄頭に埋め込まれた宝石――
淡い紫と蒼が混ざるフローライトが、かすかに脈打つ。

ユウリは片手で剣を構え、深く息を吸った。

「下がってください、お嬢様、殿下。」

「ユウリ?」

ティアナが振り返る。

その瞬間、異形が跳躍した。

――間に合わない。

だが。

「理を整えよ――フローライト」

低く、静かな詠唱。

剣先が床に触れた瞬間、

カン――

澄んだ音が響いた。

波紋のように広がる淡紫の光。

暴走していた魔力の流れが、
まるで線を引き直されるかのように整列していく。

「……何だ、これ」

ディランが目を見開く。

再生していた敵の身体が、途中で止まった。

歪んだ宝石が悲鳴を上げ、魔力の供給を断たれる。

「魔力回路の“順番”を変えました」

ユウリは淡々と告げる。

「今この区画では、再生が成立しません」

異形が一斉にこちらを向いた。

「……ですが」

ユウリは一歩、踏み出す。

「戦闘は、まだ終わっておりません」

剣を正眼に構えた瞬間、フローライトが強く輝いた。

「――次の一手を」

敵が殺到する。

ユウリは最小の動きで剣を振るった。

速さでも力でもない。

“正しい場所”を斬る剣。

魔力の結節点。
宝石と肉体の境界。
再生の起点。

一閃ごとに、敵は音もなく崩れ落ちた。

派手な爆発はない。

叫びもない。

ただ、機能停止。

「……すごい」

ティアナが思わず呟く。

ディランは小さく笑った。

「なるほどな。これが――執事の剣か」

ユウリは剣を下ろし微笑む。

「執事ですからこれぐらいは」

そして、淡く微笑んだ。