夜明けが世界を染めるころ

私はふらっとよろけ――

「っと」

今度は、左右から同時に腕を取られた。

「お嬢様、こちらですよ」

やわらかな声。

「ほらほら、迷子にならないようにね」

くすっと笑う声。

見ると、両脇にいたのはアリスとルイだった。

「え、ちょ……?」

「私たちの隣よね?」

「当然です」

2人は息ぴったりで、私を引き寄せる。

「……うん」

思わず頷くと、

「決まりですね」

「ふふ、確保完了。
殿方の綱引きは禁止よ」

そのまま、2人に挟まれるように席へ導かれた。

テーブルの、ちょうど中央。

「うわ、完全包囲じゃん」

テオが肩をすくめる。

「抜け道なしだな!」

レオが笑う。

ディランが小さく呟く。

「……殿方の綱引きは禁止、か」

「ええ」

アリスがにこりと微笑み、

「回復期のお嬢様に刺激は禁物ですから」

その隣で、ルイが優雅に扇を広げた。

「殿方は少し、自重なさい?」

――一瞬、静寂。

「……いや」

テオが眉をひそめる。

「ルイも殿方じゃん」

ぴしっ。

「……あら?」

にっこり。

「私は“美”です」

「意味わかんない!」

「分類が違うのよ」

「分類!?」

ロベルトが吹き出す。

「はは、確かに……反論しづらいですね」

アレンは真面目に頷いた。

「ルイさんは、ルイさんですもんね」

「そうでしょう?」

満足げに微笑むルイ。

その様子を見ながら、セナがぽつりと口を開く。

「……分類以前に」

全員の視線が向く。

「今、騒いでいるのは殿下方です」

「……」

「……あ」

ディランとテオ、レオが同時に黙った。

「静かにしていれば、問題は起きません」

淡々と続ける。

「お嬢様がよろけた原因も、引っ張った側です」

「正論すぎる……」

「ぐうの音も出ないですね」

ロベルトとアレンが苦笑いする。

「……反省する」

ディランが珍しく素直に言うと、

「珍し」

テオが即座に突っ込む。

「事実です」

セナは表情を変えない。

「以上です」

ぴしり。

「……お嬢様の隣に座りたかっただけでしょ。妬いてるんだよ」

テオがひそひそと囁く。

「声を荒げないのに、一番効くんだよな……」

レオも小さく同意する。

私は椅子に座りながら、思わず小さく笑った。

(……賑やかすぎるけど)

誰かが騒いで、
誰かがまとめて、
誰かが黙って守っている。

そんなこの場所が、今はとても心地よかった。