夜明けが世界を染めるころ

階段を下りきったところで、足音が止まった。

「――ティアナ様」


顔を上げると、そこにはレイさんが立っていた。
いつも通り背筋を伸ばし、穏やかな微笑みを浮かべている。

「よく眠れましたか?」

そう言いながら――
ちらりと、ほんの一瞬だけディランへ視線を向けた。

一切言葉にはしない。
けれど、すべて察している目だった。

「……はい。おかげさまで」

私がそう答えると、レイさんは静かに頷く。

「それはよかったです」

ディランの方をみて続ける。

「殿下も良い顔をされてますね」

「そうかな」

咳払いをする。

「もうみんな夕食は済まされましたか?」

私が少し不安になって聞くと、

レイさんは首を横に振った。

「いいえ。ティアナ様がまだ休まれていると伺いましたので」

「え……」

「厨房には“いつ起きてもすぐ出せるように”と伝えてあります」

当然のように言うその言葉に、胸がじんとする。

「……みんな、待ってたの?」

「はい」

即答だった。

「ほら。だから言っただろう」

「うん……」

レイは一歩下がり、丁寧に頭を下げた。

「では、お食事の準備をいたします」

少しだけ目を細めて、穏やかに続ける。
ランプの灯りが揺れる廊下で、ディランと並んで歩く。

「……行こうか」

「うん」