ティアナside
セナの部屋からでて、庭にでてきた。
引き留めそうになった…
喉が、動かなかった。
胸の奥が、ぎゅっと締め付けられる。
どうしてだろう。
こんなにも苦しいのに、
彼の選択が、あまりにも優しくて。
「……ずるい……」
小さく、こぼれる。
最後に気持ちを伝えて、
私を縛らず、
それでも「ずっと好きだ」なんて。
そんなの、
忘れられるわけがないじゃない。
初恋だった。
初めての友達だった。
やんちゃで無謀でだった幼い少年が約束を守って騎士になって会いにきてくれた。
一緒に剣の稽古もしてくれた。
何も言わず手を差し出してくれた。
好き勝手にやる私をしょうがないなって顔しながらいつもそばで守ってくれた。
不器用で、真面目で、
自分のことより、誰かの背中を守る人。
気づいたら、
当たり前みたいに隣にいて。
胸に手を当てる。
まだ、彼の魔力の温もりが残っている気がする。
確かに私は、
別の誰かに心を向け始めている。
それも、事実。
でも。
「……それでも……」
声に出すと、壊れてしまいそうで、
心の中でだけ呟く。
セナを失う選択なんて、
したつもりはなかった。
彼が“身を引く”という形で、
私に選択を委ねたこと。
その覚悟の重さが、
今になって、遅れて胸に落ちてくる。
涙が、また溢れる。
「……好きでいてくれて、ありがとう……」
届かないとわかっていても。
「……生きてくれて、ありがとう……」
膝から崩れ落ちて、涙が溢れた。
どうしてか止まらなくて、肩が小さく震える。
微かな足音が聞こえ、
「……お嬢様外はまだ冷えますよ」
ユウリがそっとカーディガンをかけてくれる。
「ユウリ……」
ユウリは何も言わず、私と同じ目線になる。涙で濡れた私の顔を、そっと、壊れものに触れるみたいに拭ってくれる。
「わたしね……」
「はい」
「長年、拗らせてた初恋……終わらせたの」
ユウリは一瞬、驚いたように目を丸くした。
けれどすぐに、いつもの穏やかな微笑みに変わる。
「お嬢様」
静かに、やさしく言う。
「初恋は――
終わったわけじゃありませんよ」
少しだけ間を置いて、続けた。
「ただ……
貴女の中で、
静かに居場所を変えただけです」
その言葉に、胸がきゅっと締めつけられる。
「……私も、そうですから」
そう言って、ユウリは小さく微笑んだ。
――これから先、
誰かと手を取り合って歩いても。
この想いは、消えない。
きっと、一生。
「……幸せに、なって……」
震える声で、そう呟く。
ユウリは、それを何も言わずに聞いてくれた。
私も――
幸せになるために。
前を向いて、進むから。
静かに、でも確かに。
あなたに恥じないように。
前を向く。
涙を拭いて。
――これは、
失った恋じゃない。
大切に、胸にしまう恋。
セナの部屋からでて、庭にでてきた。
引き留めそうになった…
喉が、動かなかった。
胸の奥が、ぎゅっと締め付けられる。
どうしてだろう。
こんなにも苦しいのに、
彼の選択が、あまりにも優しくて。
「……ずるい……」
小さく、こぼれる。
最後に気持ちを伝えて、
私を縛らず、
それでも「ずっと好きだ」なんて。
そんなの、
忘れられるわけがないじゃない。
初恋だった。
初めての友達だった。
やんちゃで無謀でだった幼い少年が約束を守って騎士になって会いにきてくれた。
一緒に剣の稽古もしてくれた。
何も言わず手を差し出してくれた。
好き勝手にやる私をしょうがないなって顔しながらいつもそばで守ってくれた。
不器用で、真面目で、
自分のことより、誰かの背中を守る人。
気づいたら、
当たり前みたいに隣にいて。
胸に手を当てる。
まだ、彼の魔力の温もりが残っている気がする。
確かに私は、
別の誰かに心を向け始めている。
それも、事実。
でも。
「……それでも……」
声に出すと、壊れてしまいそうで、
心の中でだけ呟く。
セナを失う選択なんて、
したつもりはなかった。
彼が“身を引く”という形で、
私に選択を委ねたこと。
その覚悟の重さが、
今になって、遅れて胸に落ちてくる。
涙が、また溢れる。
「……好きでいてくれて、ありがとう……」
届かないとわかっていても。
「……生きてくれて、ありがとう……」
膝から崩れ落ちて、涙が溢れた。
どうしてか止まらなくて、肩が小さく震える。
微かな足音が聞こえ、
「……お嬢様外はまだ冷えますよ」
ユウリがそっとカーディガンをかけてくれる。
「ユウリ……」
ユウリは何も言わず、私と同じ目線になる。涙で濡れた私の顔を、そっと、壊れものに触れるみたいに拭ってくれる。
「わたしね……」
「はい」
「長年、拗らせてた初恋……終わらせたの」
ユウリは一瞬、驚いたように目を丸くした。
けれどすぐに、いつもの穏やかな微笑みに変わる。
「お嬢様」
静かに、やさしく言う。
「初恋は――
終わったわけじゃありませんよ」
少しだけ間を置いて、続けた。
「ただ……
貴女の中で、
静かに居場所を変えただけです」
その言葉に、胸がきゅっと締めつけられる。
「……私も、そうですから」
そう言って、ユウリは小さく微笑んだ。
――これから先、
誰かと手を取り合って歩いても。
この想いは、消えない。
きっと、一生。
「……幸せに、なって……」
震える声で、そう呟く。
ユウリは、それを何も言わずに聞いてくれた。
私も――
幸せになるために。
前を向いて、進むから。
静かに、でも確かに。
あなたに恥じないように。
前を向く。
涙を拭いて。
――これは、
失った恋じゃない。
大切に、胸にしまう恋。
