「――失礼いたします」
扉が控えめに開く。
花瓶を抱えたユウリが、いつもの落ち着いた足取りで入って――
「……っ」
私の姿を認めた瞬間、動きが止まった。
「……お、」
花瓶が、ぐらり。
「お嬢さま……?」
腕がわずかに震える。
「……目を、覚ま――」
言葉の途中で、さらにぐらり。
「……っ、あっ」
「ユウリ!」
ディランが声を上げる。
慌てて花瓶を抱え直し、ユウリは一歩よろけた。
水がちゃぷんと揺れ、花が傾く。
「し、失礼……!」
何とか机に花瓶を置き、両手で押さえ込む。
しばらくそのまま固まったあと――
「……」
深く、息を吸った。
そしてゆっくり顔を上げる。
「……本当に……」
かすかに、声が震えていた。
「目覚めたのですね…」
「うん……心配かけたね」
そう言うと、ユウリは困ったように、でもやさしく微笑んだ。
「いえ……」
「心配していましたがお嬢様の顔を見れて―」
いつもの完璧な執事の表情に戻そうとして、戻りきらない。
「……少し動揺してしまいましたね」
そう言いながらも、その目は少し潤んでいた。
ディランが小さく息を吐く。
「無理もない。3日間、起きなかったのだから」
ユウリは軽く頭を下げる。
「お嬢さま」
「本当に…よく戻ってこられましたね」
その声は、とても静かで、あたたかかった。
「……私、セナのそばに行ってくる」
立ち上がろうとした瞬間、視界が揺れた。
足元がふらつき、身体が前へ傾く。
「――お嬢様!」
その身体を、ユウリとディランが同時に支えた。
左右から伸びた腕に受け止められ、
倒れかけた身体が静かに引き戻される。
「お嬢様。無茶しすぎですよ」
ユウリは穏やかな声でそう言い、
そっと肩に手を回す。
「私が肩を貸しますから。一緒に行きましょう」
止めるでもなく、
叱るでもなく。
ただ“一緒に”と差し出される支え。
その優しさに、胸が少し熱くなる。
「……ありがとう」
小さくそう告げると、
ユウリはわずかに目を細めた。
その反対側で、ディランは黙ったまま腕を離さない。
「……殿下?」
名前を呼ぶと、低い声が返ってきた。
「離すつもりはない」
短く、けれど迷いのない言葉。
「君はまだ万全じゃない。
倒れられるより、支える方がいい」
少しだけ力がこもる。
その温度が、やけに現実的で――安心できた。
「……2人とも、過保護だよ」
そう言うと、
「今だけです」
とユウリが静かに返し、
「いや、常にだ」
とディランが即答した。
思わず、くすりと笑ってしまう。
2人に支えられながら歩く廊下は、
いつもよりゆっくりで、静かで。
けれどその一歩一歩が、
確かに“生きている”と実感させてくれた。
扉が控えめに開く。
花瓶を抱えたユウリが、いつもの落ち着いた足取りで入って――
「……っ」
私の姿を認めた瞬間、動きが止まった。
「……お、」
花瓶が、ぐらり。
「お嬢さま……?」
腕がわずかに震える。
「……目を、覚ま――」
言葉の途中で、さらにぐらり。
「……っ、あっ」
「ユウリ!」
ディランが声を上げる。
慌てて花瓶を抱え直し、ユウリは一歩よろけた。
水がちゃぷんと揺れ、花が傾く。
「し、失礼……!」
何とか机に花瓶を置き、両手で押さえ込む。
しばらくそのまま固まったあと――
「……」
深く、息を吸った。
そしてゆっくり顔を上げる。
「……本当に……」
かすかに、声が震えていた。
「目覚めたのですね…」
「うん……心配かけたね」
そう言うと、ユウリは困ったように、でもやさしく微笑んだ。
「いえ……」
「心配していましたがお嬢様の顔を見れて―」
いつもの完璧な執事の表情に戻そうとして、戻りきらない。
「……少し動揺してしまいましたね」
そう言いながらも、その目は少し潤んでいた。
ディランが小さく息を吐く。
「無理もない。3日間、起きなかったのだから」
ユウリは軽く頭を下げる。
「お嬢さま」
「本当に…よく戻ってこられましたね」
その声は、とても静かで、あたたかかった。
「……私、セナのそばに行ってくる」
立ち上がろうとした瞬間、視界が揺れた。
足元がふらつき、身体が前へ傾く。
「――お嬢様!」
その身体を、ユウリとディランが同時に支えた。
左右から伸びた腕に受け止められ、
倒れかけた身体が静かに引き戻される。
「お嬢様。無茶しすぎですよ」
ユウリは穏やかな声でそう言い、
そっと肩に手を回す。
「私が肩を貸しますから。一緒に行きましょう」
止めるでもなく、
叱るでもなく。
ただ“一緒に”と差し出される支え。
その優しさに、胸が少し熱くなる。
「……ありがとう」
小さくそう告げると、
ユウリはわずかに目を細めた。
その反対側で、ディランは黙ったまま腕を離さない。
「……殿下?」
名前を呼ぶと、低い声が返ってきた。
「離すつもりはない」
短く、けれど迷いのない言葉。
「君はまだ万全じゃない。
倒れられるより、支える方がいい」
少しだけ力がこもる。
その温度が、やけに現実的で――安心できた。
「……2人とも、過保護だよ」
そう言うと、
「今だけです」
とユウリが静かに返し、
「いや、常にだ」
とディランが即答した。
思わず、くすりと笑ってしまう。
2人に支えられながら歩く廊下は、
いつもよりゆっくりで、静かで。
けれどその一歩一歩が、
確かに“生きている”と実感させてくれた。
