夜明けが世界を染めるころ

「それにしても、テオもだいぶ騎士団に馴染んできたな!お嬢さんも安心だな!」

「そうだね、来た時に比べたら、だいぶみんなと打ち解けてきたね」

「テオなんて、来た時はずっと威嚇してたもんなー。お嬢さんにしか懐かない猫みたいだった!」

「懐かしいね……もう3年くらい経つ?」

最近のことのように感じるけど、月日の経つのは本当に早い。
私とレオのやりとりを聞きながらセナがぽつりと口にする。

「あれは、猫じゃなくて狂犬だった。今にも噛みつきそうだった」
指導員をしてくれていたセナだ。
だいぶ苦労した様子だ。まあ、私がお願いしたんだけど。
相性は良いと思ったけど、予想通りだったな。

テオはセナから解放され、口に入れられたフィナンシェをぺろりと平らげる。

「そうだったかなー。それより、俺はレオにぶっ飛ばされたのがトラウマ」
小さく呟くテオ。
本気で怖かったらしく、「もうレオだけは怒らせたくない」と思っているようだ。

「いやぁー、あの時は悪かったよー!」
ハハハッと豪快に笑いながら頭をかくレオ。
誤解は解けて仲直りしたけれど、テオにはまだトラウマになっているらしい。

4人は30分ほど談笑し、レオは厨房に戻って行った。
セナも休憩から戻るところに声をかける。


「セナ少しいい?」

「はい」
私の真剣な声色にセナも真面目に答える。
テオは私とセナの様子をみて、悟ったかのように席を外してくれた。
意外と空気が読めて察しがいいんだよな。
周囲に人がいないことを確認してから私は声を潜めて話す。

「さっきお父様から、宝石事件に関わるなってくぎを刺されたの。だからって、あの件を放っておくのは無理だと思って」

セナは少し眉をひそめ、私の目をまっすぐに見つめる。
「……お嬢様、それは危険ですよ」

「分かってる。でも、どうしても調べたいの。セナ、一緒に手伝ってほしいの」

セナは一瞬考え込むように沈黙したが、すぐ口を開いた。

「もちろん俺はお嬢様の騎士です。力になります」

私はほっと微笑む。
「ありがとう。頼りにしてる」

短い沈黙のあと、セナは少しだけ笑みを浮かべ、肩の力を抜いたように言った。
「でも……本当に怪我だけはしないでくださいよ」

その言葉に、私は胸の奥で少し温かいものを感じた。
一緒に挑む仲間がいる。それだけで、心強さが違うのだ。