「……動きがあります」
セナの視線が鋭くなる。
馬車の窓越し、暗がりに潜む影――ガイル側の使者たちの存在を感じた。
外の気配は次第に増し、馬車は完全に包囲される。
数人の影が取り囲み、動きを制限してくる。
馬車の中で背筋を伸ばし、扉に手をかける。
セナも隣で同じ動作を取り、呼吸を整える。
「行きましょう」
2人は扉を開け、闇の中へ飛び降りた。
すぐに夜の影に身を潜め、テオたちが敵の注意を引きつける。
足音、刃の衝突、魔力の閃光――緊迫した戦場の音が周囲を満たす。
「みんな……」
私は視線を巡らせる。
テオ、レオ、ルイ、ロベルト、アレン――
それぞれが敵の動きを察知し、即座に反応していた。
しかし敵も計算ずくで、仲間たちを分散させ、私を孤立させようとしているのが分かる。
「お嬢さま、下がって!」
テオが低く声をかけ、馬車の扉から前に飛び出す。
「俺たちが食い止める」
その瞬間、テオは敵の前に立ち、まるで壁のように遮る。
「さて、いくよ。
紅く、鋭く――我が想いに応えよ、スピネル。」
テオの剣が、鼓動に呼応するように深紅へと染まった。
黒に近い紅が刃を走り、熱を孕んだ光が夜を裂く。
「燃えあがれ! ペリドット!」
レオの咆哮とともに、大剣が赤熱する。
爆ぜる火花が炎となり、刀身を包み込んだ。
「美しく、酔いしれなさい――ローズクォーツ。」
ルイの剣は淡い薔薇色に輝き、
舞う光の粒が幻想的な残像を描く。
「加速する――トパーズ!」
アレンの剣に雷光が走る。
黄色の閃光が足元を弾き、身体が一瞬で前へと押し出された。
「支える力を――スモーキークォーツ。」
ロベルトが地面に剣を突き立てると、
茶褐色の光が大地を震わせ、分厚い土壁がせり上がる。
それぞれの宝石が、主の意志に応えた。
炎、雷、薔薇の光、守護の大地、そして――
深紅の想い。
戦場に、5色の輝きが咲き誇った。
「セナ副団長、お嬢さまとはやく行って!」
テオの声は鋭く、命令であり、約束でもある。
「わかった!」
私はセナと目を合わせ、小さく頷く。
「……テオ、ありがとう」
小さく呟いた声が闇に消える。
そして、私は共鳴を発動させた。
光の粒子が静かに指先から放たれ、戦う仲間たちの身体に触れる。
瞬間、テオたちの動きがわずかに鋭くなり、力が増すのが分かった。
「これで少しは楽になるはず」
心の中で呟き、セナとともに馬車から離れ、暗がりの中を走り出す。
背中だけが見えるその人物――テオは、飄々としているのに、戦場の中で確実に光を放っていた。
