夜明けが世界を染めるころ


中庭は穏やかで、剣の音も、風の音もやわらかい。

ディランの剣は、刃は常に身体の中心線から外れず、
無駄な円を描かない。
太刀筋が乱れない。
速さよりも、正確。

セナの剣とはまた違う。

しばらくするとディランは訓練用の剣を壁に立てかけ、私の隣に座った。

「調子は?」

「だいぶ良いです」

「そうか」

「ディランこそ……調子はどうですか?」

「私かい? まあまあかな」

「ちゃんと寝てます?」

「……ん、寝てるよ」

「本当ですか?」

「ああ」

少しだけ、間が空いた。

「そうですか」

そのまま前を向いた私の隣で、

「じゃあ――」

ディランが言い、

「少しだけ、膝でも借りようかな」

「え!?」

返事を待たずに、
彼はごろっと横になった。

近くで見る金髪は、朝の光を受けてきらきらと輝いている。

「……あの、重いです」

「じゃあ10分だけ。筋トレだと思って」

「なんですか、それ……」

スッと目を閉じる。
長いまつ毛。こんな無防備でいいのだろうか。

だけど彼の重みは不思議と嫌ではなく、春の陽だまりのように穏やかで私は結局そのまま動かなかった。

その10分は、思っていたよりずっと短く感じられた。