夜明けが世界を染めるころ


ディランと出かけた翌日、目を覚ました。

……なんだか、身体がだるい。
眠りが浅かったわけでもないのに、
手足に、微かな重さが残っている。

けれど、今日からまた訓練だ。
共鳴の精度を、さらに上げていかなければならない。

ベッドから起き上がると、
一瞬、視界が揺れた。

「……おっと」

思わず壁に手をつく。
けれど、すぐに立て直す。

……問題ない。
きっと、少し疲れているだけだ。

そう思って、部屋を出た。

広間に入ると、
すでにみんなが集まっていた。

アリスとレオが朝食を作り、
アレンとロベルトが、それを手際よく並べている。

「みんな、おはよう」

声をかけると、

「お嬢様、おはようございます」

アリスが丁寧に頭を下げる。

「おはようございます」
アレンとロベルトも爽やかに挨拶する。

「お嬢さん、おはよう!
今日の朝はフレンチトーストだよ」

レオが誇らしげに言う。

「やったっ」

思わず、頬が緩んだ。

ディランの別荘で食べたフレンチトースト。
あの味を再現しようと、
何度も試してくれているのを知っている。


「お嬢さまー、おはよう」

テオが、いつもの調子で緩く笑う。

「おはよう、テオ」

すると、
ルイが私の手元に視線を落とし、楽しそうに目を細めた。

「おはようお嬢様。
ねぇ……その指輪、殿下から?」

「……一応、形だけね」

曖昧に返すと、
意味ありげな笑みが返ってきた。

……深掘りはしないでほしい。

周囲を見渡すと、
セナとディラン、
それからレイさんの姿は、まだ見えない。

そのとき――

「お嬢様、少し失礼します」

「……え?」

ユウリが、
迷いのない動きで近づき、
私の額に、そっと手を当てた。

その瞬間、
自分の体温が、妙に高いことに気づく。

「……お嬢様」

ユウリの声が、低くなる。

「熱があります」

一斉に、
広間の空気が変わった。

……あれ?

そう思った瞬間、
さっきまで我慢できていた重だるさが、
一気に身体を支配した。

これは――
思っていたより、
「問題ない」状態ではなかったらしい。