見知った顔を見つけ、声をかけようとしたが――どうやら試合中のようだ。
私は足を止め、少し離れた位置から様子を見守ることにした。
鋭い剣捌きと、無駄のない華麗な身のこなし。
銀髪の彼はひときわ目立っている。陽の光を受けて揺れる銀の髪と、冷静な視線。
対する5人ほどが次々と挑みかかるが、そのすべてを、まるで相手にならないとでも言うように、あっさりと倒していた。
そこへ、のんびりと剣を構える黒髪の彼が前に出る。
一瞬の静止――次の瞬間、滑らかに加速し、銀髪の彼へと一気に詰め寄った。
(……レベルが違う)
先ほどまでとは明らかに空気が変わる。
剣と剣がぶつかるたび、鋭い音が訓練場に響き、周囲の騎士たちも自然と視線を向けていた。
2人だけ、別の場所で戦っているようだ。さすがだ、と素直に思う。
しばらく互角のやり取りが続いた後、
――乾いた音とともに、黒髪の彼の剣が折れた。
「そこまで!」
その声と同時に試合は終了となる。
「セナ、テオ。お見事」
私は拍手しながら近づく。
「お嬢様、いらしてたんですね」
銀髪のセナが気づき、こちらへ歩み寄ってくる。
「お嬢さまぁ! 久々に会えたー!」
次の瞬間、
黒髪の彼――テオが駆け足でこちらへ向かってきた。
そのまま勢いよく抱きついてくる。
「ちょ、テオ……!」
思わず声を上げる私をよそに、
彼は腕を離そうとしない。
私は苦笑しながら、
その背中をぽんぽんと軽く叩いた。
さらりとした黒髪が肩に触れ、
間近で見る赤い瞳は、鋭さよりもどこか不安げだ。
テオは、14歳という異例の若さで
王国騎士団へ入隊した実力者。
だが――
その力とは裏腹に、彼の育った環境は決して恵まれていなかった。
今年で16歳。
私とは、たった一つしか年が違わない。
それでも時折、
こうして子どものように甘えてくる瞬間がある。
軽く抱擁を交わしたあと、向かい合う。
長めの前髪が、きれいな紅い瞳を少し隠していた。
「前髪、少し伸びたね。目に入ったら痛いから、切った方がいいよ」
そう言って、さらりと前髪に触れる。
「そうかな。でも見えるから、別にいいよ」
「せっかくルビーみたいにきれいな瞳なのに」
するとテオは、私の手をそっと取った。
「そんなこと言うのは、お嬢さまだけだよ。
でも……お嬢さまがそう言うなら、ほんのちょっと切ろうかな」
そう言って、片手で自分の前髪をねじねじといじる。
ルビーのように紅い瞳。
私は心からきれいだと思う。
ただ、この国では紅い瞳は珍しく、時に“不吉”だと囁かれる。
――そんなことを言う人たちを片っ端から引っ張たいてやりたい、と口にしたら、
テオに大笑いされたことがあったっけ。
私は足を止め、少し離れた位置から様子を見守ることにした。
鋭い剣捌きと、無駄のない華麗な身のこなし。
銀髪の彼はひときわ目立っている。陽の光を受けて揺れる銀の髪と、冷静な視線。
対する5人ほどが次々と挑みかかるが、そのすべてを、まるで相手にならないとでも言うように、あっさりと倒していた。
そこへ、のんびりと剣を構える黒髪の彼が前に出る。
一瞬の静止――次の瞬間、滑らかに加速し、銀髪の彼へと一気に詰め寄った。
(……レベルが違う)
先ほどまでとは明らかに空気が変わる。
剣と剣がぶつかるたび、鋭い音が訓練場に響き、周囲の騎士たちも自然と視線を向けていた。
2人だけ、別の場所で戦っているようだ。さすがだ、と素直に思う。
しばらく互角のやり取りが続いた後、
――乾いた音とともに、黒髪の彼の剣が折れた。
「そこまで!」
その声と同時に試合は終了となる。
「セナ、テオ。お見事」
私は拍手しながら近づく。
「お嬢様、いらしてたんですね」
銀髪のセナが気づき、こちらへ歩み寄ってくる。
「お嬢さまぁ! 久々に会えたー!」
次の瞬間、
黒髪の彼――テオが駆け足でこちらへ向かってきた。
そのまま勢いよく抱きついてくる。
「ちょ、テオ……!」
思わず声を上げる私をよそに、
彼は腕を離そうとしない。
私は苦笑しながら、
その背中をぽんぽんと軽く叩いた。
さらりとした黒髪が肩に触れ、
間近で見る赤い瞳は、鋭さよりもどこか不安げだ。
テオは、14歳という異例の若さで
王国騎士団へ入隊した実力者。
だが――
その力とは裏腹に、彼の育った環境は決して恵まれていなかった。
今年で16歳。
私とは、たった一つしか年が違わない。
それでも時折、
こうして子どものように甘えてくる瞬間がある。
軽く抱擁を交わしたあと、向かい合う。
長めの前髪が、きれいな紅い瞳を少し隠していた。
「前髪、少し伸びたね。目に入ったら痛いから、切った方がいいよ」
そう言って、さらりと前髪に触れる。
「そうかな。でも見えるから、別にいいよ」
「せっかくルビーみたいにきれいな瞳なのに」
するとテオは、私の手をそっと取った。
「そんなこと言うのは、お嬢さまだけだよ。
でも……お嬢さまがそう言うなら、ほんのちょっと切ろうかな」
そう言って、片手で自分の前髪をねじねじといじる。
ルビーのように紅い瞳。
私は心からきれいだと思う。
ただ、この国では紅い瞳は珍しく、時に“不吉”だと囁かれる。
――そんなことを言う人たちを片っ端から引っ張たいてやりたい、と口にしたら、
テオに大笑いされたことがあったっけ。
