夜明けが世界を染めるころ

ナタリーさんとの別れから数日訓練に明け暮れていたとき、

「今日は休みにしよう」
ディランの提案に、みんなが頷く。

「俺、街に行きたい!久々に料理したいし、買い物もしてくる!」
レオが元気よく声を上げる。

「私も街に行きたいわ。軽くお土産を買って、自分のお店も見てくるわ」
ルイも笑顔で答える。

「俺は寝るー」
気怠げにテオがあくびをする。

アレンとロベルトも剣の手入れしょうと話をはじめる。
こうして、それぞれが自分の休暇を楽しもうとする様子を見て、ディランはふとティアナの方を見やった。

「ティアナ、私とデートしよう」


「デートですか?」
思わず声が上ずる。

「婚約者同士だろ?お披露目のこともあるし、その前に2人で時間を過ごそう」
ディランはにっこりと笑った。

「わかりました」
私は少し照れながらも、小さく頷いた。

ディランと街にやってきた。

「さて、お姫様、お手をどうぞ」
ディランがわざとらしくそう言う。

戸惑っていると、スッと手を引かれる。
「今日はデートだ。はぐれたら大変だしね」
軽い調子のその言葉に、思わず笑みがこぼれる。

街の雑踏を抜けながら、2人で歩く。
こんな穏やかで優しい時間は久しぶりだ。
窓際の花や香ばしいパンの匂い、街の人々の笑顔。
すべてが、心をふんわりと温める。

「カフェにでも入ろうか」
「はい」

席に着くと、私は少し気になっていたことを口にする。
「そういえば、ディラン……共鳴って、魂と魂が同調したとき、魔力は石を介さず循環し、肉体・精神・記憶にまで干渉する現象が起こる、って言ってましたよね?」

ディランは頷く。
「そうだ。それを使いこなせれば……人や物に働きかける力があるんだ」

「その肉体にまで――ってことは、傷口とかの修復もできるってことですかね?」
思わず目を輝かせて訊く。

「うーん……それはどうだろうな」
彼は少し眉をひそめる。
「症例がないから確実には言えない。だが、理屈の上ではできる可能性はある――ってことになる」

私は少し胸が高鳴る。
「可能性……か」

「だけど……その力は危うい」
ディランの声が、ふっと低くなる。
「君にどんなリスクがあるかもわからない。無闇に使うことはおすすめしない」

私は頷き、落ち着いた声で答える。
「ええ、わかってます」

ディランは少し間を置き、ふっと柔らかい表情に戻った。
「なら、いい」